2021 Fiscal Year Research-status Report
味蕾におけるカドヘリンファミリーの局在と機能および味覚障害との関連
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21K11731
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
濱田 俊 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (60282349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生田 李緒 福岡女子大学, 国際文理学部, 助手 (90853557)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 味蕾 / カドヘリン / 細胞接着分子 / シナプス形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
【味蕾細胞Nカドヘリン遺伝子欠損マウスの作成と解析】 ケラチン8遺伝子のプロモーター制御下でタモキシフェン依存性に働くDNA組換え酵素Cre/ERT2を発現するK8-Cre/ERT2マウスを、Nカドヘリン遺伝子の第1エクソンをlox-P配列で挟んだfloxed Nカドヘリンマウスと交配し、目的の遺伝型のマウスを作成した。タモキシフェン投与方法は、同じK8-Cre/ERT2マウスを利用して味蕾での条件的遺伝子組換えを行っている文献を参考にした。しかし、タモキシフェン投与後もNカドヘリンたんぱく質の明らかな減少は認められなかった。 【Ⅱ型細胞の分化とNカドヘリンの発現との関係】 Ⅱ型細胞の成熟に従い、Nカドヘリンの発現が減少する可能性を検討するため、DNA合成期にゲノムDNAに取り込まれるEdUをマウスに投与し、投与後4.5、6.5、8.5、10.5日目に固定した。EdU取り込み細胞を可視化し、NカドヘリンとⅡ型細胞マーカーPLCβ2の発現強度を調べた。最終分裂からの時間が長くなるに伴い、PLCβ2発現強度が増加しNカドヘリンの発現が低下するという仮説を支持する結果は得られなかった。 【クラスター型プロトカドヘリンβ [cPcdhβ]の味蕾内発現と機能】 cPdchβの1つ、cPdchβ3の発現を赤色蛍光たんぱく質で可視化できるレポーターマウスを用いて検討した。その結果、cPcdhβ3はⅡ型とⅢ型細胞の両方に発現していることがわかった。また、全cPcdhβ欠損マウスの味蕾を各種マーカー抗体(細胞種マーカー、神経マーカー、シナプスマーカー)で免疫染色し異常の有無を検討したが、大きな異常は見いだせなかった。 【亜鉛欠乏マウスにおけるカドヘリンの局在】 亜鉛欠乏飼料を与えることで、血清亜鉛値低値を示し亜鉛欠乏に特有の症状を示すマウスを作成した。今後、得られた組織を解析に用いる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【Ⅱ型細胞の分化とNカドヘリンの発現との関係】と【クラスター型プロトカドヘリンβ [cPcdhβ]の味蕾内発現と機能】の項目については、年度当初に予定していた実験を終えることができた。前者については、実験デザインに問題があったが、作成した組織試料は使用できるので、次年度再解析を行う。 【味蕾細胞Nカドヘリン遺伝子欠損マウスの作成と解析】K8-Cre/ERT2マウス、floxed Nカドヘリンマウスの導入、交配が順調に進み、初年度のうちにタモキシフェンを投与する予備検討まで進むことができた。当初の予想とは異なり、他グループの研究で味蕾に発現する別遺伝子の条件的遺伝子組換えに用いられたタモキシフェンの投与条件ではNカドヘリン遺伝子の組換えが誘導できなかったため、今後はタモキシフェンの投与方法の検討が必要である。 【亜鉛欠乏マウスにおけるカドヘリンの局在】組織試料まで得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
【味蕾細胞Nカドヘリン遺伝子欠損マウスの作成と解析】交配により作成した味蕾細胞Nカドヘリン遺伝子欠損マウスにタモキシフェンを投与してもNカドヘリンたんぱく質の減少が確認できなかった。その理由としてタモキシフェンの投与回数、総投与量、投与してから組織採取までの時間、が最適化されていないことが第一の原因として考えられる。そこで、このマウスにCre活性のレポーター遺伝子を交配により導入したマウスを交配により作成する。このマウスを利用すると、Cre/ERT2によるDNA組換えが生じた細胞は赤色蛍光たんぱく質tdTomatoを発現する。十分な割合のⅡ型細胞でCre/ERT2によるDNA組換えがみられるようなタモキシフェンの投与方法を検討する。また、Cre/ERT2によるDNA組換えが起こったⅡ型細胞でNカドヘリンたんぱく質の発現量低下がみられるかどうか検討する。 【Ⅱ型細胞の分化とNカドヘリンの発現との関係】 2021年度の実験はデザインに問題があることがわかった。次年度はEdUで標識されたⅡ型細胞と標識されていないⅡ型細胞の両者について、NカドヘリンとPLCβ2の発現強度を取得する。組織切片中に観察されたすべてのⅡ型細胞のNカドヘリンとPLCβ2の発現強度をXY平面にプロットし、その集団の中でEdU標識で標識されたⅡ型細胞のNカドヘリン・PLCβ2の発現強度の特徴を明らかにする。 【亜鉛欠乏マウスにおけるカドヘリンの局在】亜鉛欠乏マウスの味蕾組織に対して、NカドヘリンおよびTカドヘリンの免疫染色を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、floxed N-cadherinマウスとk8-Cre/ERT2マウスは購入する計画で2系統で88万円の予算を計上していた。しかし研究開始後に新たに見積もりを取り直してみると、マウスの価格が高騰しており、購入することが困難になった。そこで、国内でこれらのマウスを使用している研究者を探し、必要な手続きを経て、マウス輸送費などの実費のみで提供してもらうことができた。
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