2021 Fiscal Year Research-status Report
欠測値を含む高次元および非正規データに対する漸近理論の開発とその応用
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21K11795
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
瀬尾 隆 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 教授 (00266909)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多変量正規性検定 / 欠測データ / 漸近展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度における本研究課題の研究の成果ついて,大きく2つの課題である,(1)多変量正規性検定問題,(2)平均ベクトルや分散共分散行列に関する検定問題に対していくつかの成果を得た. (1)について,多変量正規性検定問題とは,多次元データの母集団分布が多変量正規分布に従っているかどうかを調べる検定問題であり,多くの推定・検定問題や統計的手法において,非常に重要な問題である.本研究課題では以下の2つの研究成果をあげることができた.1つは,データの構造として,単調欠測データ,特に2ステップ単調欠測データに対する多変量正規性検定問題を取り扱い,先行研究である完全データに対する多変量標本尖度(Mardiaによる多変量標本尖度)を欠測データに適用できるように分解して,新たな統計量を与えた.さらに,その欠測データに適用できるMardia型多変量標本尖度の期待値と分散を漸近展開を用いて評価することによって,標準化した検定統計量を与え,正規近似の数値的評価を行った.成果は国際的に評価の高い専門雑誌に掲載されている.もう1つは,標準化した検定統計量に用いられる期待値と分散について,完全データの場合の結果を利用した線形補間近似による検定統計量を提案し,近似精度の評価を行った. (2)については,2ステップ単調欠測データの下での分散共分散行列の分散がすべて等しく,共分散がゼロである構造であるかどうかの検定や分散共分散行列が異なる場合の2標本問題に対する部分平均ベクトルなどの検定問題を取り扱い,検定統計量の導出とその近似上側パーセント点を与え,モンテカル・ロシミュレーションにより数値評価を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欠測データにおける多変量正規性検定問題について,検定統計量の導出とその検定統計量の分布について,まずは2ステップ単調欠測データの仮定の下で議論することから始め,順調に成果を上げることができた.また,同時に,多変量正規性検定統計量のひとつである多変量標本尖度に対する正規化変換統計量が先行研究で導出されているが,その改良のアイデアがあり試みたところ,計算なども順調に進み,その近似精度を数値的に調べるためのモンテカル・ロシミュレーション実験についても順調に結果を得ることができた.現在,学術雑誌に投稿すべく,準備中である. 一方,単調欠測データの下での分散共分散行列の構造の検定や部分平均ベクトルなどに関する検定問題についても新たな成果を得ており,こちらも学術雑誌に投稿できるよう論文を作成中である.
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Strategy for Future Research Activity |
多変量正規性検定問題については,2ステップ単調欠測データをさらに拡張して,一般の単調欠測データの下での議論に進めていく.まずは3ステップ単調欠測データの下で議論し,検定統計量の導出,その帰無分布における上側パーセント点を与え,モンテカルロシミュレーション実験を通して数値評価を行う. また,単調欠測データの下での分散共分散行列に関する検定や部分平均ベクトルに関する検定についても引き続き進めていく.さらに,成長曲線モデルにおけるいくつかの問題において議論する.これらの設定では単調欠測データではない一般欠測データや高次元の場合への拡張,また,母集団分布が多変量正規分布でない楕円分布や一般分布への拡張を試みる.
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Causes of Carryover |
学会出張等のための旅費,研究補助のための学生アルバイト代,その他,英文校正の費用を計上していたが,思うように出張することができず,学会出張等のための旅費の支出がなく,次年度使用額が生じた.次年度は研究成果のための学会出張や研究打合せのための旅費,論文作成のための英文校正費の使用を予定している.また,大学院生による研究補助(アルバイト)の中で,統計量の計算チェックやシミュレーションプログラム作成などを計画しており,次年度の研究費とあわせて使用する予定である.
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