2022 Fiscal Year Research-status Report
欠測値を含む高次元および非正規データに対する漸近理論の開発とその応用
Project/Area Number |
21K11795
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
瀬尾 隆 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 教授 (00266909)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 多変量正規性検定 / 欠測データ / 漸近展開 / 多変量尖度 / 多変量歪度 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度の研究実績として,前年度である令和3年度に引き続き,大きく分けて以下の3つの課題について研究成果を得た. (1)多変量正規性検定問題については,前年度に引き続き,多次元データに欠測が生じた場合の正規性検定問題に対するMaridiaによる多変量標本尖度を取り扱い,いくつかの成果を得た.特に,欠測データの構造として前年度に議論した2-step単調型の結果を3-step単調型に拡張することを考え,成果を得ることができた.具体的には,3-step単調欠測データの下での多変量標本尖度をその分解によって定義し,漸近展開近似を用いてその期待値と分散を評価し,標準化した検定統計量を与えている.さらにその検定統計量の帰無分布に対する正規近似をモンテカルロ・シミュレーションにより数値的に評価し,近似ではあるが実用的にも使用可能であることを示している.また,完全データの下では,Mardiaの多変量標本尖度を用いた正規性検定統計量として正規化変換統計量が知られているが,そのさらなる改良にも取り組み,新たな検定統計量の提案とその帰無分布の正規近似評価,そして検出力の数値評価を行った.さらに,Mardiaの多変量歪度を用いた検定統計量の帰無分布について,自由度調整法による新たなカイ二乗近似を提案した. (2)平均ベクトルや分散共分散行列の検定問題について,前年度に引き続き,部分平均ベクトルの検定問題に対する2-step単調欠測データの下で検定統計量の帰無分布の漸近展開近似を導出して,近似精度を評価した. (3)成長曲線モデルの適合性検定問題について,完全データの場合,その検定統計量の帰無分布はF分布となるが,2-step単調欠測データの場合に拡張することを考え,2-step単調欠測データの下での最尤推定量を利用した検定統計量を提案し,その近似帰無分布について自由度調整によるF近似を与えた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多変量正規性検定問題については,昨年度に引き続き,単調欠測データの下での多変量標本尖度の定義とそれを用いた検定統計量を与えることができた.特に,2-step単調欠測データの時と同様の考え方を基に3-step単調欠測データの下での検定統計量を統計量の分解によって定義することに成功し,その検定統計量の期待値と分散について,漸近展開近似を与えることができ,順調に進んでいる.今後,論文としてまとめ,学術雑誌に投稿予定である.また多変量標本歪度についても同様な議論を進めようとしている. 部分平均ベクトルの検定問題や分散共分散行列の検定問題についてはさらなる拡張を考え部分的な成果を得ている. さらに成長曲線モデルの適合性検定問題についても成果を得ており,今後発展させようとしている.
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,多変量尖度ばかりでなく,多変量歪度にも注目し,研究を進めており,今後は多変量標本歪度を用いた正規性検定統計量の分散を漸近展開により求め,さらに改良した自由度調整法によるカイ二乗近似の提案,および単調欠測データの場合への適用を試みる. 部分平均ベクトルの検定や分散共分散行列の検定については,これまでとは異なる仮説検定問題に対する未解決な問題があり,その問題への解決を試みる.これらについては,これまで得てきたいくつかの検定統計量の漸近展開の導出法を駆使して新たな検定統計量の分布の漸近展開近似を与える予定である. 成長曲線モデルについては,単調欠測データの下での最尤推定量などのこれまでの結果を適用して得た昨年度の結果を論文としてまとめ,さらなる拡張があり,その問題を議論していく.高次元データへの問題についても考えていく.
|
Causes of Carryover |
学会出張等のための旅費についてはほぼ計画通りに使用できた.また研究補助のための学生アルバイトやその他の支出についてもほぼ予定通りに使用できたが,コロナ渦の影響もあり,若干の次年度使用額が生じた. 次年度は研究成果のための学会出張や研究打合せのための旅費,統計計算のチェックやシミュレーションプログラム等の研究補助による大学院生のアルバイト代の使用を計画している.
|