2021 Fiscal Year Research-status Report
非一様なデータに対し安全性と効率を両立する情報理論的に安全な暗号技術に関する研究
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21K11894
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
尾花 賢 法政大学, 情報科学部, 教授 (70633600)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非一様確率分布 / 確率的符号化 / 一様性 / 一意復号 / 情報理論的安全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,以下の4条件を満たす符号化方式 (L,C,N)-UPE (UPE: Uniform Prefix Encoding)の基礎的な検討を行った.(1) 符号化前の入力データのビット長が L,(2) 符号後のビット長 C,(3) 任意の確率分布に対して符号後の先頭 Nビ ットは一様に分布する(このとき,符号化方式は確率分布を知っていることを仮定する),(4) 符号語は一意復号可能である. 具体的には,まず,小さい L (入力ビット長)の入力上に確率分布を定義し,可能な限り小さい C (符号長)および大きい N を有するような UPE の具体的構成を試行錯誤しながら行った.試行錯誤の結果,L=5 程度の小さな入力であれば,入力データにどのような確率分布を設定した場合でも,C=L+1, N=L となるような UPE,(L,L+1,L)-UPE が構成できることが経験的に明らかになった.そこで,試行錯誤で構成した UPE の構成法を非決定的なアルゴリズムとして形式的に定義した結果,確率分布のサイズの線形時間(入力データ長 L に対して O(2^L))で動作する決定的アルゴリズムの構成を行うことができた.構成したアルゴリズムをL=10程度のより大きなサイズの入力データに対し,計算機シミュレーションで符号化を行った結果,実験で試した全ての入力長,およびすべての確率分布に関して,構成された符号が (L,L+1,L)-UPE の要件(Lビットの入力長を前半Lビットが一様分布となり,かつ一意復号できるように L+1ビットの符号後に符号化)を満たすことが確認できた.現状は,まだシミュレーションにる結果であるため,今後は構成したアルゴリズムが任意の入力長 L,および任意の確率分布に対して (L,L+1,L)-UPE を構成するアルゴリズムになっていることの数学的証明を与えることが課題となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の準備段階で,小さな入力長に対しては,(L,L+1,L)-UPE が構成できる肯定的な結果が予想できていたが,与えられた確率分布に応じて手作業で符号化を行っていたのに対し,本年度の研究によって,手作業で ad hoc に行っていた作業を確率的アルゴリズムとして定義することができ,定義したアルゴリズムが手作業では確認が困難な入力長のデータに対して,すべて (L,L+1,L)-UPE が保証できた点は,本研究の一年目の成果としては非常に肯定的なものであると考えている.現状,すべての実験データに対して肯定的な結果は得られているものの,アルゴリズムの正当性に関する証明が行えていないため,アルゴリズムの正当性を証明する手法の開発,および正当性証明を行うことが今後の課題となる.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,今年度に定義した与えられた入力データ長と,データの確率分布を入力としてUPE-(L,L+1,L)を出力するアルゴリズムの正当性を証明することが主な課題となる.併せて,二項分布やベルヌーイ分布など,代表的な離散的確率分布に従うような入力に対して,より時間計算量や領域計算量が少ないアルゴリズムを開発することも検討していきたいと考えている. さらに,UPEによって改善されると予想される情報理論的暗号技術の具体的な検討についても行っていく予定である.来年度は特に秘密分散法と,情報理論的に安全なメッセージ認証UPEによってどの程度効率化が達成されるかを検討したいと考えている.
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Causes of Carryover |
本年度はUPEの実現可能性について,主に理論的な検討を行ってきたため,予定していた予算計画との差異が生じた.来年度はアルゴリズムの正当性証明とともに,より大規模な入力に対して計算機を使用したシミュレーションを実施する予定であり,そのため計算機購入の予算として充てる予定である.
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