2023 Fiscal Year Research-status Report
超高精度計算による高マッハ数での縦渦の擾乱受容性とその崩壊に関する研究
Project/Area Number |
21K11922
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
比江島 俊彦 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 講師 (60316007)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 航空宇宙工学 / 流体力学 / 数理物理 / シミュレーション工学 / 再使用型宇宙輸送機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,高マッハ数縦渦の衝撃波との干渉による擾乱成長過程とその崩壊の内部構造の詳細解析を行うために,衝撃波の鋭い捕獲と高次精度補間による高精度計算法を構築し,主流中の超音速乱流場生成に必須な知見を得ることである。縦渦は乱流遷移の中心となる組織渦構造であるが,高速流における強い擾乱に対する受容性やその崩壊機構は未解明である。この高速流における縦渦の衝撃波との干渉による崩壊過程の解明は,次世代高速旅客機や宇宙往還機におけるエンジンの性能向上,超音速域での騒音低減および再突入時に生じる空力加熱に対する機体の熱防御に関する問題等に貢献が期待できる基礎的知見となる。本研究では,高マッハ数で発達する3次元渦構造をスーパーコンピュータ(大型計算機)による数値計算と安定性理論に基づく数理解析により明らかにする。 令和5年度に新たに得られた知見は以下の通りである。(1) 2つの交差する斜め衝撃波と縦渦の干渉によって生じる渦崩壊は,衝撃波角度や縦渦の旋回強さが大きい場合に発生し,その形態は淀み点と再循環領域を有するbubble型渦崩壊であり,その崩壊域全体が亜音速状態から成り,上流渦軸を通る中心軸上での運動量fluxが一旦減る特徴を持つ。加えて,エンストロフィー生成項のうち渦の伸縮と傾斜に関するものがその干渉領域で大きな値を持つこともわかった。これらの結果は学術論文として出版された。(2) 渦崩壊の形態を調べていく中で,衝撃波と干渉しない縦渦遷移から渦崩壊に関して新たな発見があったため,そちらにも取り組んだ。具体的にはspiral型渦崩壊が発生する条件を安定性理論も使って見出し,現在その結果をまとめる論文も作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの斜め衝撃波と縦渦が干渉する流れ場において生じる渦崩壊はbubble型であり,本研究で導いた渦崩壊が発生する条件が妥当であることを,縦渦導入型ストラットを用いた超音速燃焼場で生じた渦崩壊からも確認した。それらの結果を2つの論文として投稿し,それぞれがJournal of Fluid Mechanics (2023)と Physics of Fluids (2024) に掲載された。また,高マッハ数での縦渦の擾乱受容性に関係する現象として,spiral型の渦崩壊が生じる場合の特徴を調べ,その発生メカニズムに関する知見をいくつか得た。
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Strategy for Future Research Activity |
衝撃波との干渉が無い場合に,spiral型渦崩壊が生じることがわかったため,その条件等も擾乱受容の観点から詳しく調べ,bubble型も含めて渦崩壊現象が発生する条件を整理する。また,得られた圧縮性(超音速)渦崩壊と高速流での変動抑制を表す圧縮性効果との関連解明にも取り組み,高マッハ数での縦渦の擾乱受容性とその崩壊に関する新しい知見を学術論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
本年度予算の残額は,電気代高騰の影響により高くなった大型計算機使用料と研究成果をまとめる投稿論文の英文校正費用,成果発表の旅費に充てるため,次年度(最終年度)に繰り越した。
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