2022 Fiscal Year Research-status Report
温度錯覚を活用した液体への温度提示手法に関する研究
Project/Area Number |
21K11947
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
橋口 哲志 龍谷大学, 先端理工学部, 助教 (70710581)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 温度感覚 / 錯覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは皮膚に接触した物体の温度から物質的特徴(材質,重さなど)を把握する.物体の温度を制御すれば物質的特徴を変えられるが,物体によっては温度を容易に変えられないものがある.例えば,水は温かく保温しようと大がかり装置が必要となり,冷やすにも氷などを用意する必要がある.これは温度提示をコンテンツに活用するための一課題となる. 温度提示を間接的に変更する研究はいくつか存在する.指の腹を提示部としてその周辺に小型の温度提示装置で温度提示することで,温度提示部の温度を変更できることが確認されている.しかし,本研究が対象とするような液体では,周辺を覆われるように接触し,液体自体の接触感が少ないため,どのように温度を感じるかがわからない.そこで,我々は足裏に温度提示した場合にその周辺に接触している水温の温度知覚が変わることを確認した.この場合,足裏に交互に温覚刺激,冷覚刺激を提示すると,水の温度がすべて温覚を提示した場合よりも温かく感じるという結果が得られた.しかし,踵から温冷温冷(温:温覚刺激,冷:冷覚刺激)の順に提示した場合と冷温冷温と提示した場合では結果が異なり,冷温冷温はすべて温覚を提示した場合よりも冷たく感じる結果となった.このように温度の組み合わせによって温度感覚が異なる可能を示唆しており,これら組み合わせをより詳細に分析する必要がある.また,この現象の分析を他の部位でも分析する.特に指先は物体の感触を把握する上で多く使用される部位であり,触れる物体でも温度を温冷覚刺激の組み合わることで多様な表現が可能となる. よって,本研究では足裏・指先といったよく物体に触れる部位を対象に,液体が周囲に接触している場合に温度感覚がどのように変化するのかを分析する.これから分析結果から温度感覚の知覚メカニズムの一知見として分析していくとともに,温度錯覚を活用した間接的な提示方法を提案していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は指先以外の近傍2か所に装着型温度提示装置で温度刺激を提示して,指先で知覚する温度感覚への影響を分析した.この実験結果では,指先の温度を他の刺激の組み合わせにより,提示温度と逆の温度に知覚すること(温覚提示を冷たく,冷覚刺激を温かく)を確認していた.しかし,この実験では温度提示は指先が物体に触れてから装着型温度提示装置の制御を開始するため,物体に触れると同時に温度が一定に変化していく提示手法となっていた. 一方で温度を提示するタイミングはこの手法だけでなく,温度をあらかじめ装着型温度提示装置で提示した上で指先の物体に接触する場合もある.そこで2022年度では,このような条件の違いでも同様の錯覚が起こり得るのかを追加で検証することにした.この実験結果では,指先の温度錯覚の生起回数は減少する傾向にあり,物体に触れるタイミングと温度提示の設計が必要であることが示唆させた.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,2021年度に生じた疑問を解決するために追加実験を進めることとなった.これらの実験条件は系統的に実験を進めていく必要はあるが,2023年度はこの分析結果を踏まえて,実際に水を用いた温度知覚の分析を進めていく予定である.水を用いた実験では,装着型の温度提示装置も装着感や温度出力の広域化などの装置改良を含め,実験環境を整えて実験を行っていく.
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Causes of Carryover |
当初は実験装置を刷新する予定であったが,2021年度の追実験を優先したため,実験内容では既存の装置でも十分に実験できると判断した.しかし,今後の研究の推進方策でも述べたように実験を遂行していく上で実験装置の刷新する必要があり,その環境構築に予算を執行する予定である. また研究成果を国際会議にて発表を予定していたが,今年度はオンライン開催が多く旅費を必要としなかった.本研究で対象となる触覚分野ではオンラインではなく実際に体験してもらうことが重要であり,来年度は実際に現地に赴きデモ展示に力を注いでいく予定で旅費として計上していく.
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Research Products
(9 results)