2021 Fiscal Year Research-status Report
曲面における光反射特性の計測手法の確立と文化財アーカイブへの応用
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21K11954
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
井上 信一 千葉大学, 大学院工学研究院, 特任准教授 (70743813)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | BRDF / 光反射特性 / 曲面 / 光沢 / 光沢ムラ / 質感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,曲面を有する形状の物体においても計測可能な光反射特性の新たな計測手法の確立とその文化財アーカイブへの応用を目的としている. このため,まずは曲面の形状と光反射特性(BRDF)を同時に計測できる計測原理の確立に取り組んだ.この結果,主な成果として,パラボラアンテナとして知られるパラボロイド(放物面)の反射特性を応用した計測原理を考案した.測定対象の曲面は,局所的にはパラボロイドと考えられる.パラボロイドの凸側からパラボロイドの焦点に向けて集光する光を当てると,反射光は平行光として反射する特性に着目した.この平行光となるはずの反射光からの反射角度のズレの分布がBRDFである.平行光からのズレの計測技術は既に確立できているため,この照射光を集光とする集光照明法を,曲面のBRDF計測の計測原理とし,実験によりこれが機能することを確認した.パラボロイドの曲面を球体の一部と考えると,この計測原理では曲面の形状を曲率Rとして測定できる.この新しい計測原理を用いれば,光反射特性(BRDF)と物体の形状(曲率R)が同時に計測できる. さらに,文化財アーカイブへの応用として,BRDFと見え(主観的な光沢)にも着目し研究を進めた.同じBRDFの物体でも,光源の距離に依存して観察される光沢像の大きさが異なることに基づき,光源の距離で見え(主観的な光沢)の変化を調査した.文化財アーカイブでは,計測だけではなく,そのデータでどのように見えるのかについても考慮する必要がある.加えて,質感には光沢ムラも寄与するため,光沢ムラの測定評価技術にも着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,初年度①曲面における光反射特性計測原理の確立,次年度②文化財アーカイブに向けた仕様検討と計測試作機開発,最終年度③実物体(曲面)での光反射特性計測の検証を計画している. 本初年度は計画通り,曲面における光反射特性計測原理の確立に取り組み,測定対象の曲面をパラボロイドと仮定する集光照明法を計測原理として考案した.この計測原理に基づく実験装置を製作し,この計測原理が機能することを確認した.また,異なるアプローチでは,リングライトを光源に用いた曲面における光反射特性計測原理の検討も進めた.これらの研究進捗により,来期は計画通り,計測試作機開発を進めることができる. さらに,BRDFと見え(主観的な光沢)について,また光沢ムラの測定評価技術にも着手することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
来期次年度も計画通り,文化財アーカイブに向けた仕様検討と計測試作機開発に取り組む. 計測原理に基づく実験装置は本年度製作できたため,今後はこれを用いて実験を進めていく.これら実験から得られる知見を反映し,計測試作機を設計し開発する.計測試作機の仕様には文化財測定に必要な条件も検討したい.本研究では,産業製品や文化財の計測に活用できる計測装置の開発を目指しており,今後は計測試作機として開発し,実用化の可能性を検証していく. 本研究で進めている測定対象の特性であるBRDFは,一般的な現象としては光沢であり,光沢ムラはその一部である.BRDF計測技術は,同時に光沢ムラ計測技術に展開できる技術であることが本研究を進める中で明らかになってきた.今後は,光反射特性として光沢ムラの測定と解析にも取り組んでいく.
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