2021 Fiscal Year Research-status Report
自動車の遠隔操縦者の運転特性とインタフェースに関する研究
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21K11986
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
杉町 敏之 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (60517001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郭 鐘聲 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (20826078)
須田 義大 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (80183052)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遠隔操縦 / 運転特性 / HMI / ドライビングシミュレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,自動運転を活用した新たなモビリティサービスに関する関心が高まっている.国土交通省と経済産業省では,福井県永平寺町において国内初となる自動運転レベル3車両による遠隔監視・操作型の自動運行装置を備えた自動運転車両を用いた無人自動運転移動サービスの本格運行を開始している.今後は,市街地といった複雑な交通環境下での遠隔監視・操作型の無人自動運転移動サービスの本格運行が予想される.運行時は自動運転車両が自律的に対応することが難しい場合はオペレータの遠隔操縦による適時介入が必要となるが,遠隔操縦は従来と運転環境が大きく異なるためにオペレータの負担が課題となる.そのため,遠隔操縦者に対するより安全で利便性の高い遠隔操縦システムの構築が重要となる. 本研究では,乗用車の遠隔操縦者に対して適切な情報提示や利便性の高いインタフェースを構築することを目的としている.また,体感情報の得られない遠隔操縦者がモニタからの視覚情報だけでどのレベルまで実車と同じように運転できるかは明らかになっていないため,遠隔操縦者の運転特性の解明や運転に係る疲労度の評価に取り組む.遠隔操縦者の運転特性や疲労度を評価するため,モーション付きのドライビングシミュレータ(DS)を用いて検討を行う. 2021年度では,DSを用いた遠隔操縦に係る評価環境の構築を行うとともに,市街地での遠隔操縦を想定した予備実験を実施した.予備実験の結果を踏まえ,従来の運転(DSの運転席での運転)と比べて遠隔操縦席での運転に対して運転特性に影響を与える評価実験条件を設計し,普通自動車免許を保有する健常な成人10名を対象にDSを用いた評価実験を実施した.評価実験では,運転行動に関するデータとともに生体計測,アンケートによる主観評価から遠隔操縦者の運転特性に関する評価を行った.詳細については,【現在までの進捗状況】に記す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請した2021年度では小型モビリティおよび乗用車を対象として,様々な曲率のカーブを対象としたDS走行実験を実施して運転行動と生体計測,主観評価の結果から検討を行う予定であった.対象とした運転方法としては,運転席での運転および従来型,ジョイスティック型,システム協調型の運転といった4種類に設定していた.2021年度では,本研究の実施に必要な実験環境の構築と基礎評価実験,この基礎評価実験の結果を踏まえたDS走行実験を実施し,遠隔操縦者の運転特性の評価を行った. 2021年度で実施した実験環境の構築では,遠隔操縦者の運転特性を評価するため,DSを用いた遠隔操縦者の視界環境の再現性に関する調整を実施した.運転方式については,ゲームコントローラによる従来型,ジョイスティック型,システムが運転操作を行う協調型をDS環境で再現するとともに,先行研究で得た知見を基に各パラメータ調整を実施した. 4名の実験協力者を対象とした基礎評価実験を実施し,DSの運転席での運転と比べて遠隔操縦席での運転に対して運転特性に影響を与える走行実験条件として,速度は低速20km/hと中速50km/h,道路線形は50R,カーブは右左方向に設定した.基礎評価実験で得られた知見から実験条件を設定し,10名の実験協力者を対象としたDS走行実験を実施した結果,従来型の運転方式と比較した場合,低速と比べて中速では前後加速度のばらつきが増大するとともに,直線走行時の速度が高くなる傾向があった.また,操舵についても低速に比べて中速はカーブ走行時に操舵角のばらつきが増大する傾向が示唆された. 2021年度は新型コロナウイルス蔓延予防のため,予定していた評価実験は実施内容を縮小し,一部の内容については延期した.一方で,今後の研究の推進に対して必要な知見を得ることができた.そのため,全体の進捗としては支障のない状況であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
申請した2022年度の研究計画では,市街地における交通安全確認が必要なユースケースを策定し,2021年度の成果から得られた知見を反映させた手法により,安全確認に関する認知と疲労度を含めた遠隔操縦者の運転特性の解析を実施する.評価実験の被験者属性については,同一の日常的に運転を行う一般ドライバと職業ドライバ(2種免許保有)を対象とし,慣れの影響とシステムへの適応を合わせて検証する.また,周辺環境の認知について評価を行い,情報提示で求められる要件について検討することとなっている. 今後の研究では,新型コロナの影響により実施を延期していた運転席での操縦方法を含めて4種類の運転方式に対して2021年度で得られた知見に踏まえたDSによる評価実験を実施する.遠隔操縦者の運転特性の評価だけでなく,視線計測を合わせて行うことによる認知に対する評価も実施する.DSによる評価実験で得られた知見から,遠隔操縦方法および運転のために必要な情報提供のためのヒューマンマシンインターフェース(HMI)として適合する遠隔操縦システムの仕様を取りまとめる.提案する遠隔操縦システムに対して様々な属性を考慮した評価実験を実施,その有効性について検証を行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナの感染拡大の影響により,予定していたドライビングシミュレータを用いた被験者実験を実施することができなかったことにより,被験者実験に係る費用の執行が生じなかった.また,学会がオンライン開催となったため,学会参加のための旅費に関する費用も生じなかった. 上記の理由により次年度使用額(B-A)が生じた.次年度は,当該年度で予定していた被験者実験を合わせて実施し,その実験に係る費用に次年度使用額を使用する予定である.
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