2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a road rage reduction system by sharing driver's behavior and psychological state
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21K11987
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Research Institution | Aichi University of Technology |
Principal Investigator |
山高 正烈 (崔正烈) 愛知工科大学, 工学部, 教授(移行) (60398097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早見 武人 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (60364113)
荒川 俊也 日本工業大学, 先進工学部, 教授 (50631248)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | あおり運転 / ヒューマンファクター / ドライビングシミュレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,近年大きな社会問題となっている「あおり運転」について,「あおる側」および「あおられる側」の運動行動の特徴を抽出し,両ドライバに自他の運転行動や心理状態をフィードバックして自己の運転行動への認識と自己抑制を促し,あおり運転の発生と拡大を未然に防ぐことを目的とする.あおり運転の発生には,「あおる」側はもとより「あおられる」側にも問題の起因となる運転行動が存在しており,両者の運転行動や心理状態といったドライバの特徴に着目した対策を講じることが,問題の抜本的な解決につながると考えている. そこで,本年度は後続車によるあおり運転に着目し,後続車のどのような運転パターンがあおり運転として知覚されやすいかを検討した.そのために,後続車の様々な運転パターンの設定が可能な「大型あおり運転ドライビングシミュレータ」を開発し,被験者実験を実施した.具体的には,車の運転経験の違いにより,後続車の運転行動に対して「あおられた」と判断される基準が異なる可能性のあることを考慮し,運転熟練者と非熟練者それぞれがあおり運転を知覚した場合の車間距離知覚,および,あおり運転の危険度を比較・検討した. 検討の結果,運動熟練者は自車の車速が変化してもあおり運転知覚時の車間距離がほとんど変わらなかったが,運転非熟練者は,車速の上昇に伴い車間距離を広く知覚することが示された.一方,後方車両への注意を促した運転条件の場合は,運動熟練者と非熟練者ともに,車速の変化による車間距離知覚の変化は見られなかった.運転非熟練者は,通常運転時には後方への注意が不安定であったが,後方車両への注意を促すといった運転パターンの変更により,比較的安定した車間距離を意識できたと考えられる.これらの研究成果は,自動車技術会2021年秋季大会学術講演会予稿集,並びに自動車技術会論文誌として採択された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
あおり運転という攻撃的な運転行動が生起する心理メカニズムについては,日本のみならず欧米を含め数多くの研究がなされているが,そのほとんどはあおる側の心理行動を分析したものであり,あおられる側の立場に立って,後続車のどのような運動行動があおり運転として認識されやすいかについては検討が不充分である.あおり運転事例の相当数は,あおる意識が全くないにも関わらず「あおった」と勘違いされてしまう言わば認識のずれによるものであり,後続車の運転パターンと「あおられ感」という認知特性の定量的な評価が必要と考えられる. 一方,車運転においては運転熟練者と非熟練者とで運転行動と認知・判断の特性が異なることが指摘されており,あおり運転においても同様に,車の運転経験の違いにより後続車の運転行動に対して「あおられた」と判断される基準が異なる可能性が考えられる.このような運転経験の違いによるあおり運転知覚の特徴の解明は,あおり運転の撲滅のみならず交通安全教育にも役立つものと考えられる. このような,当初は想定できてない着観点から,大型ドライビングシミュレータによる実験環境を構築し,あおり運転を知覚した場合の後続車の運転パターンの同定を行った.実験は計2つ実施し,実験1は通常運転時,実験2は後方注意運転とし,あおり運転を知覚した場合の運転熟練者と非熟練者の車間距離知覚,および,あおり運転の危険度を比較・検討した.また,研究成果は査読付き学術誌に採択された.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,「あおり運転」を効果的に判断する手法の開発,および,「あおり運転」発生時の効果的な抑制・拡大防止手法の開発を目指す.そのために,後続車によるあおり運転のみならず,前方への割り込み運転条件も加えて詳細に検討を行う.また,脈拍計や視線検出を含む様々な生理指標による検討を加え,心理指標と生理指標の融合を狙う.更に,あおられた後のドライバーの注意の変化や,運転行動・運転パターンの変化についても詳細に検討する予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により,旅費と人件費の支出が当初の計画より若干少なめになっていた.ただし,残高は15万未満と少なく,概ね予定通り支出していると考えている.
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Remarks |
自動運転技術が発展しても,車の究極の操縦者は人間です.あおり運転のほとんどが「あおる側」と「あおられる側」の誤解や勘違いによって生じるのでは?というのが同研究所の着眼点.両者の心理特性と運転挙動の特性を考慮した対策を講じることが,あおり運転の効果的な抑制につながると考えています.
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