2021 Fiscal Year Research-status Report
視覚の知覚メカニズムを活用したシンプルでコンパクトなパーソナル裸眼3D表示の実現
Project/Area Number |
21K11997
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高田 英明 長崎大学, 情報データ科学部, 教授 (10880859)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 裸眼3D / 再帰性反射 / 微小拡散 / 輝度重畳 / 光学ブレンディング |
Outline of Annual Research Achievements |
再帰性反射と微小拡散により、画質を損なうことなく映像を投影できることを示し、かつ、その品質を保ったまま光学ブレンディングに必要な隣接映像の輝度重畳特性を実現できるかを試行し実証することで、シンプルでコンパクトなパーソナル裸眼3D表示モジュールの実現に向けた基礎データを取得した。 最初に、映像表示デバイスとして、再帰特性が理想状態の場合にどの程度の拡散特性が必要かを明確にした。具体的には、理想的な再帰性反射が得られる場合に、反射面に微小な拡散層を配置し、観察者の片眼周辺のみに反射光が到達する拡散角度を見出し、輝度測定結果から、スクリーンの設計指針を明らかにした。 次に、一般的な工業製品の利用を前提に、反射/拡散フィルムに必要な制約条件や特性を把握することで、素材選定および投射設計の基礎データとした。 最後に、本手法の設計指針による画質の可能性について、サンプル材料を用いた映像投影評価を実施した。特に3視点分の2D映像を重畳して投影することで、観察者からは裸眼にて3D映像を知覚できることも示した。具体的には、3台のプロジェクタの投影角度内の視域の範囲内においては、眼間距離より投影間隔が大きいにも関わらず、観察者にはどの視点位置から観察しても両眼視差が生じ、立体視が可能であることが確認され、また、左右方向への視点移動に対する自然な運動視差についてもおおむね問題なく再現されていることが確認された。また、再帰性反射と微小な拡散により、プロジェクタから投影される光の多くが観察者の方向に戻ることから、小型のモバイルプロジェクタにも関わらず、通常のオフィス照明下においても十分な画像の明るさを確保できていることも確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
再帰性反射と微小拡散により、画質を損なうことなく映像を投影できることを示すことができ、また、光学ブレンディングに必要な隣接映像の輝度重畳特性を輝度測定結果から明らかにすることができており、当初の予定通り、シンプルでコンパクトなパーソナル裸眼3D表示モジュールの実現に向けた基礎データをおおむね取得することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
実現技術の具体化(隣接映像間の輝度の角度依存性の把握と輝度重畳の最適化):光学ブレンディングによる隣接映像の部分的な輝度重畳は、知覚的な擬似両眼視差を生じさせ、眼間距離より広い映像間隔でも、自然な運動視差を維持したまま3D映像を知覚させる。本手法の適用には、出射光の輝度分布が直線的かつ隣接映像の合計輝度が一定になるのが理想である。一般的な拡散フィルムはガウス分布を示すものが多く、それらを利用した場合の奥行き知覚への影響を評価し最適な構造パラメータを示す。 プロトタイプ構築と評価:本研究で得られた最適な構造パラメータを基に裸眼3D表示のプロトタイプを構築する。10台程度の小型プロジェクタによる視域約60度の小型投影モジュールと、再帰反射と拡散を合わせた対角30インチ程度のフレキシブルな簡易スクリーンを目標に構築を進める。特に従来技術では困難であった大角度投射による圧倒的な小型軽量化および画質と輝度の大幅な向上を狙い、パーソナル裸眼3Dモジュールの実現性を実機にて示す。 応用検討(協調作業に向けたシステム間連携の検討と要求条件の明確化):本研究で構築したプロトタイプを複数用いて、複数人による協調作業を実現する手法を検討する。具体的には、複数のモジュールによる相互の位置関係の把握と表示映像の同期が必要となる。また、モジュール同士の通信手段の確保も重要である。複数のモジュールを複数の端末とみなし、これらを統合して制御する統合的協調作業システムを新たに提案し、多くの分野における本技術の活用を促進させる。
|
Causes of Carryover |
年度後半に予定していた成果発表が、新型コロナ感染症感染対策のためオンライン開催となり、実機によるデモンストレーションができないことから翌年開催のものに延期することとした。また、関連分野企業および学会における調査・研究についても同様に、実機を用いたディスカッションや実機関連の調査ができず、次年度へ延期した。 それらに関連し、学会発表や関連分野企業へのデモンストレーション用のプロトタイプ構築の一部を次年度の機会に合わせて最新機材にて構築する計画とした。
|
Research Products
(1 results)