2021 Fiscal Year Research-status Report
イカの擬態行動におけるパターン変化に学ぶ動的パターン形成理論
Project/Area Number |
21K12065
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岩本 真裕子 同志社大学, 文化情報学部, 准教授 (80738641)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
イカやタコのなどの頭足類は筋収縮により体表パターンを瞬時に変化させ擬態やコミュニケーションを行なっていると言われている。しかし、その動的パターン形成のメカニズムは全く明らかにされていない。本研究は、自律分散型制御と中央集権型制御の共存に着目し、頭足類の筋収縮による動的パターン形成におけるパラレルなメカニズムのバランス制御に関して理解することを目的とする。研究遂行にあたっては、数理モデルの構築を研究の中心に据え、微分方程式により記述した数理モデルの数値シミュレーションと強化学習などの機械学習の研究手法を駆使し、環境や状況に応じて最適な制御バランスを獲得する過程を考察する。 本年は、数理モデル構築の第1段階として、色素細胞と筋繊維の構造に着目した。イカ類の表皮には、3色の色素細胞が層を成し、その下には、虹色細胞と白色細胞の層がある。また、それぞれの色素胞には筋繊維と神経が円状に伸びていることが知られている。まずは、先行研究で構築した色素細胞1層のプロトタイプの2次元モデルについて、追加の数値シミュレーションを行い、考察を深めた。次に、それぞれの筋繊維の末端は全体の10%程度しか繋がっていないこという近年の実験結果(Hannah E. Rosen, et al., 2017)を踏まえ、神経の結合に不均一性を導入し、結合の割合の違いによるパターンの維持と崩壊について数値シミュレーションを行った。この結果からイカ類が見せる特有の不均一な「まだら」模様は、神経ネットワークの不均一性から実現されている可能性が示唆されたが、一方で、実際にまだら模様を見せる個体も、美しい縞模様に体表模様を変化させることもできることから、神経のネットワーク構造だけでなく、情報伝達の電気信号の強度が模様に関わると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
表皮構造については、「茶色の色素胞は大きさが2種類あり、その色素胞の大きさによって結合されている筋繊維の数が異なる(George R.R. Bell, et al., 2013) 」という実験結果も踏まえて数理モデルを構築する予定であったが、その前段階の数理モデルの構築と数値計算に時間がかかり、まだ実現できていない。筋繊維の数が異なる数理モデルは、ネットワーク上の微分方程式系モデルとなるため、一から新たなモデル構築が必要な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、表皮構造をより現実のものに近づけたネットワーク上の数理モデルを構築し、数値計算を行う。 一方で、神経ネットワークだけでなく、情報の伝達強度もパターンに影響がある可能性があることから、ネットワーク上でない数理モデルについても引き続き考察する必要があると考えており、電線方程式などを踏まえ、神経系による筋収縮制御の数理モデルを構築し、数値計算を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの蔓延に伴い、学会や打ち合わせがオンラインで行われていたため、旅費の使用がなかったが、2022年度からはオンサイトでの開催も増えてきたので、学会での情報収集や研究発表、研究打ち合わせに使用する予定である。
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