2021 Fiscal Year Research-status Report
エスノメソドロジー手法を用いたジャズ即興音楽演奏知識の記述と計算可能モデリング
Project/Area Number |
21K12087
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
安藤 大地 東京都立大学, 学術情報基盤センター, 准教授 (20552285)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 即興演奏 / 音楽認知科学 / 音楽教育 / ジャズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ジャズギターの即興演奏を対象とし、その習得課程のエスノメソドロジーの手法を用いた質的分析と計算可能なモデル化を行う。そのために3人の生徒役にジャズギターを習得する過程をレッスンの録音の発話記録演奏記録をもとに分析を行っている。 2021年度は、ギター演奏経験がなかった1名(以下被験者A)が20回程度、ギター演奏経験があった1名(被験者B)が12回程度のレッスンを、それぞれ受けた。1名(被験者C)は都合により休止中である。(本学研究倫理のヒトを対象とした研究のガイドラインに基づき、生徒役はいつでも休止できるとしている) 被験者Aでは、指板に対する音高認知が、これまで被験者Aが主に演奏してきたピアノと大きく違うことに最初は戸惑っていたが、1年弱のレッスンを通じて徐々に、ギターのフレットが半音単位であること、基本的に4度調弦であることなどを体感・実感・認知することができるように、音高の認知が大きく変容しつつある。 また被験者Bは、当初スケールを基本とした指の動きとして音高をとらえていたが、この1年間のレッスンでコード構成音やそのテンションのポジションとして音高を把握することができるように変容していることが、単旋律への和声付けを行う際の発話からわかってきた。 また、本研究の前段階として5年ほど行ってきたジャズサックスのレッスンの録音記録や学習者の一人称記述の分析を行い、音高の認知の違いと変容について考察を行った。これはジャズ即興演奏音楽即興学会の査読付き論文誌に投稿し、採択された。この結果をもとに、ギターの生徒役の音高認知との比較を行い、研究をより発展させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジャズギター即興演奏のレッスンを始めてからの、複数人の生徒役の音高の認知の変化が顕著であり、また既存研究のジャズサックス即興演奏と比較しても異なることから、モデルが個々の演奏者によって大きく異なるものの、ギター即興演奏の共通認識としてコードトーンと、上部構成音の非コードトーンの認知がキーとなりそうだということがわかってきた。 また、レッスン音源を基にしたエスノメソドロジーの手法を用いた質的分析について、音高認知について言及していそうな発話の特定ができるようになっており、今後の分析の制度はより高くなる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、エスノメソドロジーの手法を用いた質的分析を進めるともに、計算可能モデル化に取り組む。本年度の研究を通じて、指板のフィジカルな認知とコードトーンの記憶的な認知が大きく影響することが分かった。指板の認知に関しては事前調査の通り運指の確率論的モデルが有効に働きそうなことがわかってきたため、これを行う。また、クラシックピアノ経験者では頭の中でドレミを歌う傾向があり、これと身体動作を結び付ける傾向が強いことがわかったため、ドレミの解明を歌詞としてとらえる自然言語処理的な計算可能モデルの取り込みも考えている。
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Causes of Carryover |
被験者が使用している楽器の消耗品(ギターの弦)の購入が、世界的な流通の滞りが原因で在庫不足で購入が間に合わなかった。次年度に購入を行う。
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