2022 Fiscal Year Research-status Report
神経伝達物質の非線形ダイナミクスと脳疾患発症の数理構造
Project/Area Number |
21K12105
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 寛太郎 東京大学, ニューロインテリジェンス国際研究機構, 特任准教授 (00557704)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 神経伝達物質 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、脳・神経系の数理モデル構築を進めた。特に、発達に伴う脳・神経系の構造や機能の変化を考慮した数理モデルを構築した。具体的には、振動子系の同期・非同期現象や神経伝達物質が脳波リズムに与える影響について調査した。振動子ネットワークは脳・神経系の典型的なモデルであり、そのダイナミクスを解析することは、脳・神経系に限らず生命現象一般の機能を理解する上で重要である。振動子ネットワークにおけるノイズ摂動、周期外力、結合強度のダイナミクスの相互作用を数値的に解析し、この相互作用が振動子ネットワークの完全同期に与える影響を数値的に解析した。その結果、これらの力の適切な相互作用により、微弱な摂動で系を同期させることができることがわかった。 また、神経伝達物質の非線形ダイナミクスの数理モデル化、脳疾患発症のメカニズム調査などを進めた。これまでドーパミンが低周波数脳波へ与える影響について調査してきたが、そのほかいくつかの神経伝達物質にも同様の作用があることを数値解析により確認した。よって、これら神経伝達物質の機能の相違をより深く理解し、適切に分類することが必要であることがわかった。 さらに、その過程でニューラルネットワークリザバーを用いた異常検知手法の開発や分類問題への応用にもつながった。従来手法と比較してより簡易に精度良く異常検知や分類が可能となり、幅広い応用が期待される。また、先に述べた振動子系の話題を発展させて膵β細胞への応用研究の成果を得た。膵β細胞への微弱な電気刺激によるアルゴリズムを構築し、機能不全膵β細胞の制御を可能とするものであり、新たな糖尿病治療プロトコルを提案した。また本研究課題と直接の関連はないが、副産物として新たな時系列解析手法の開発にもつながった。リカレンスプロットを用いた新たな手法を用いることで、神経細胞への入力の推定が精度良くできることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経伝達物質の非線形ダイナミクスと脳疾患発症の数理構造の解明に向けた脳・神経系の数理モデル構築が進展している。また、副次的なものとしてリザバーへの応用研究などが進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き脳・神経系の数理モデル構築を進め、神経伝達物質の非線形ダイナミクスと脳疾患発症の数理構造の数理モデル研究を進める。
|
Causes of Carryover |
計算用PCについて、納期等の問題で次年度購入の必要性が生じたため。
|
Research Products
(7 results)