2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of arteriosclerosis's onset by using computer model
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21K12131
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
山田 訓 岡山理科大学, 情報理工学部, 教授 (20393506)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コンピュータシミュレーション / 動脈硬化 / シグナル伝達系 / 炎症アンプ / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
アテローム性動脈硬化は以下のようにして進行する。酸化LDLが血管内皮下に蓄積する。酸化LDLは内皮細胞でVCAMを誘導して、血液中の単球を吸着し、内皮下へ誘引する。さらに、内皮細胞が産生するM-CSFは単球をマクロファージに分化させる。マクロファージは内皮下で酸化LDLを貪食し、泡沫化して内皮下に蓄積する。内皮下に蓄積した泡沫化マクロファージによりプラークが形成され、動脈硬化になる。リウマチやゲートウエイ反射では、非免疫細胞における炎症アンプが重要な働きをしていることが示されている。動脈硬化も炎症が関わる疾患であるので、炎症アンプを組み入れたモデルを構築した。具体的には、内皮細胞内に、NFkBとSTAT3を活性化する炎症アンプがあるとし、NFkBの経路とIL-6の経路の挙動を計算することによって炎症アンプをモデル化した。炎症アンプの活性化によって生じる活性型NFkB-STAT3複合体によってVCAMとM-CSFの産生が誘導されるというモデルを構築した。高濃度LDLと低濃度HDLという動脈硬化が発症しやすい条件でシミュレーションすると、次第に酸化LDLが内皮下に蓄積し、単球の誘引、泡沫化マクロファージの蓄積が再現できた。動脈硬化の発症過程を定性的に再現できたと考えている。しかし、通常の条件では、IL-6経路の抑制物質であるSOCSが働くので、泡沫化マクロファージの蓄積は一過性で、蓄積が持続しない。IL-6経路の抑制性タンパク質であるSOCSが働かないF759突然変異の条件でシミュレーションすると、NFkB-STAT3の活性化が持続し、泡沫化マクロファージの蓄積も持続することが分かった。動脈硬化モデルの構築とシミュレーション結果を日本免疫学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炎症アンプを組み込んだ動脈硬化モデルを構築し、通常のLDL、HDL濃度では、泡沫化マクロファージの蓄積は起こらず、高濃度LDL、低濃度HDL条件下で泡沫化マクロファージの蓄積が生じることを確認した。研究計画の1年目では、モデルを構築し、基本的な性質が再現されることが目標であったので、1年目の目標は達成できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的なモデルが構築できたので、モデルに対する各パラメータの影響を調べる感度分析を行い、動脈硬化発症に重要な反応の特定を行う。動脈硬化発症においては、泡沫化マクロファージの蓄積が持続することが必要で、現時点のモデルでは、F759突然変異で観察されるだけである。複数の反応の異常が重なることによって、泡沫化マクロファージの蓄積の持続が起こるのではないかと考え、2種類または3種類のパラメータを同時に変化させて、どの組み合わせで蓄積の持続が起こるか分析し、動脈硬化発症に係る反応を特定することを行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で研究打ち合わせや学会発表の出張ができなかったため、旅費の支出がなかった。動脈硬化の臨床研究を行っている研究者との研究打ち合わせや学会出張に使用する。
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