2021 Fiscal Year Research-status Report
高確度なイン・シリコ創薬を目指した新規分散力エネルギー評価法の開発
Project/Area Number |
21K12132
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
吉田 達貞 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (80527557)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 分散力エネルギー / イン・シリコ創薬 / 分子軌道法 / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、簡便かつ高精度な分散力エネルギーの評価法について継続的な開発と改良を行い、生体巨大分子に対する実用性を実証することを目的としている。これにより、原子・電子レベルの観点から、生体関連分子の分子間および分子内相互作用における分散力の寄与の詳細かつ定量的な理解につながる。また、従来よりも高確度かつ高速なインシリコ・スクリーニングの実現等への波及効果が期待できる。 本年度は、我々独自の分散力エネルギーの評価法について、1)分子間相互作用エネルギー解析の汎用性の向上、2)分子内相互作用エネルギー評価への適用範囲の拡張を行うことを目的とした。1)に関しては開発手法とそれよりも計算負荷の大きなメラープレセット摂動法や最近の汎関数を含む密度汎関数法、反対に計算負荷の小さな半経験的分子軌道法との包括的な比較を行い、開発手法の有用性を含ハロゲン錯体や含亜鉛錯体を用いて確認することができた。2)に関しては、ペプチドや糖構造の立体配座間の相対エネルギーを約1 kcal/mol程の誤差で評価可能であった。 また、次年度以降に予定している生体巨大分子を用いての本分散力エネルギーの評価法の有用性実証のための準備に着手し、レクチンと糖鎖との複合体構造について、数100ナノ~マイクロ秒程度の分子動力学計算を実施中である。得られたトラジェクトリーに対して、現時点では数スナップショットの解析ではあるものの、非経験的フラグメント分子軌道法と本手法の組み合わせにより、レクチン自身の二量体形成および糖鎖認識における相互作用エネルギーを現実的な時間内で算出可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響による世界的な半導体不足により、本研究の遂行に必要不可欠なハイパフォーマンスコンピュータ等の納期までに時間を要したために、研究の進捗状況はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、必要に応じて本手法を改良しながら、レクチン・糖鎖複合体を含むより多くの生体巨大分子系での応用計算を行う。すなわち、1)タンパク質とリガンドとの複合体形成に伴う結合自由エネルギー変化の予測検証と並行して、2)化合物ライブラリーを用いての低分子リガンドの結合活性予測を実施し、標的レクチンに対する新規リガンドの探索を行う。コロナウイルス感染症の影響により、2)でヒットした化合物およびそれらのスクリーニングに必要な実験試薬等の調達には時間を要することが予想される。そのため、当初計画よりも前倒しでインシリコ・スクリーニングを実施し、研究の推進を図っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延により、参加・出張予定をしていた学会ならびに専門分野の研究者を招いてのディスカッションや講演会がいずれもオンライン開催となった。次年度使用額の使用計画としては、学会旅費および講演謝金の使用を予定するが、これらが次年度もオンライン開催を余儀なくされた場合には、スクリーニング用試薬の購入に使用する。
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