2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on Transaction Data and its Application by using Algebraic Multi-Dimensional Bookkeeping System
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21K12139
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
出口 弘 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (60192655)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 交換代数 / データ伝票 / POEデータ / 摘要 / JSON形式 / 会計公準 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、見積もりや受発注、生産プロセスでの投入産出などに関する会計公準の枠組みを超えた複式データについて、「代数的実物簿記を用いた状態表現」と「状態表現に付随する摘要項目」からなる複合データについて、これを扱うデータ伝票形式を定式化した。データ伝票はJSON形式で表現され、ドキュメントデータベース上での蓄積・検索が容易である一方で、異なる情報処理システムを持つ組織間でのデータ転送と利活用が可能となる枠組みである。ここで対象となるデータは、POE(活動時点)データと呼ばれ、何らかの組織の活動に伴う状態変化を活動時点で認識し補足したデータである。POEデータの内、取引や生産などの諸活動を発生時点での状態変化を、複式データとして捉えることが可能なものを特に複式POEデータと呼ぶ。 会計公準を満たす財務会計の対象となる諸取引などの複式POEデータだけでなく、会計公準の範囲を超えた生産プロセスでの投入産出もまた複式POEデータとなる。複式POEデータは、活動時点で生じる状態変化(フロー)を複式簿記の数式表現で記述する部分と、それがどのような活動時点データであるかに関する日時や取引先などの諸情報を表す摘要(アノテーション)部分の記述が必要である。これを情報処理枠組みとして扱うために定式化されたのが、データ伝票である。データ伝票は、複式POEデータの摘要部分をキー・バリュー型の部分代数として、複式簿記で表現する状態変化部分を交換代数(数式形式)として、両者を格納する。データ伝票から取り出した摘要部分も複式簿記部分もそれぞれデータオブジェクトとして関数型の処理が可能となる。これにより関数仕様に基づく計算モジュールの再利用性(疎結合性)が高い、ストック・フローの広義の会計処理が可能となる。 本年度は、このデータ伝票に関する情報処理枠組みを実装し、それをGitHubに公開することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、生産会計が対象とする生産プロセスに対して、代数的実物簿記を用いた状態表現と摘要部分をどちらも取り出して関数処理のできるデータ伝票形式での記述を定式化し、同時にその情報処理を行うシステムの開発を進める予定であった。この目標はほぼ達成され、複合データ伝票の情報処理基盤のテスト実装(PoCモデル)が作成され、処理系はGitHubで公開された。 実際の情報処理システムとして、データ伝票を実装することができたことは大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、複式POEデータとデータ伝票に基づく広義の会計処理の枠組み(生産会計)により、地球温暖化ガスや廃棄物などの非財務データの情報処理などが、複式POEデータのデータ伝票に基づく生産会計の枠組みで統合的に扱えることを示す。従来、環境データなどの非財務データは、会計処理の範囲外として独立の情報処理を必要としていた。しかし近年のサプライチェーン排出規制でのスコープ1、2、3における地球温暖化ガスの排出記録の義務化など、今後環境や人的資本などESG関連の多くの領域で非財務情報の監査が求められる。この非財務情報の情報処理の多くが複式POEデータに対するデータ伝票に基づく情報処理として統合的に扱うことができることを示す。 さらに、今後サプライチェーン上の他の企業とのデータ連携が、インボイスデータのみならずサプライチェーン排出規制のスコープ3のように多くの領域で求められる。しかしそこでは、企業間の情報システムの差異が大きな課題となる。現在企業間のシステムの差を吸収するためのデータの規格化が試みられているが、情報処理そのものはそれぞれの処理系で手続的に記述されねばならない。データ伝票はJSON形式によりテキストデータとして企業間で転送され、そこに格納された複式POEデータは、交換代数(数式)により関数処理可能な複式簿記部分とデータ代数(キー・バリュー)により関数処理可能な摘要(アノテーション)部分に分離され取り出される。このとき、それぞれの企業のシステムに実装される交換代数及びデータ代数の言語処理系により複式簿記部分も摘要部分も当該の処理系の言語のデータオブジェクトとして扱うことが可能となる。これによりデータのみならず、その上の関数的なオペレータ(メソッド)も異なる処理系の上で同一の動作をすることが保証される。 これらの高度なデータ連携の枠組みの確立が最終年度の目標となる。
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Causes of Carryover |
コロナの影響が続いており、海外発表及び訪問(エストニア、フィンランド)ができなかったこと。国内学会もオンラインであったことなどのため。
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Research Products
(4 results)