2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on ICT utilization by older adults to realize independence and willingness to participate in society
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21K12142
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
錦谷 まりこ 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (40327333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 文彦 九州大学, アジア・オセアニア研究教育機構, 准教授 (50760451)
有吉 美恵 聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 助教 (50826360)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高齢者 / ICT / 孤立 / デジタルコミュニケーション / 健康維持 / 意欲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ICTの活用が浸透した社会環境において、ニーズを持つ高齢者とシーズとしてのICTとの双方に注目し、リタイア前後の生活の変化と孤立・孤独化の関連を探り、健康増進と社会活動の継続を目指してICTによる効果的な介入方法を探る可能性研究である。前期高齢者のICT利活用の有無と状態を調査し、リタイア後のコミュニケーションに変化が生じる状況をとらえ、生活習慣と健康状態を考慮したうえで、「生活意欲・関心や人付き合い」と「主観的孤独感、客観的孤立」との関連性を解明する。最終的には、高齢者の自立を実現させるのに有効なICT利用の仕組みの提案を目指す。 最初に、高齢者が子供世代と離れて暮らしていることによる孤立状態とICTとの関連を調査した従前の研究をベースに、別離家族内でのインターネットを用いた無料通話などのコミュニケーションと精神的健康の関係について、記述評価した研究論文を作成した。 次に、高齢者の生活に関する国際比較調査のデータを二次利用して、日本の高齢者のICT利活用の程度を米国の高齢者と比較し、また人付き合いの程度について評価した。日本の高齢者は年齢調整してもなお米国に高齢者に比べICT利用割合が低く、高齢者のICT非利用と社会的孤立リスクに関連性が示されたが、米国では両者に関連はなかった。 また、高齢者向け就職紹介サービスに登録している高齢者と地域のシニアクラブのメンバーである高齢者を対象として、就労状態や社会活動、ICT利活用の状態や、新しいことを始める際の行動経済傾向を把握するために、質問紙調査を行った。経済行動傾向として「リスク回避傾向」や「現状維持バイアス」を評価した。ここまでの解析から、ICTの利用状態や、情報社会への賛成度合いは、年齢が強く影響することが示されていた。また、ICT非利用者のリスク回避傾向や現状維持バイアスが高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はコロナ感染症防止の行動規制があり、研究調査の依頼などを研究者が直接に出向いて行うのが難しかったが、就職紹介サービスを提供している団体や地方自治体の職員が非常に前向きに協力してくださったお陰で実施できた。遠隔会議システムやファイル共有クラウド、チャットアプリなどの活用が有効であったと考えられる。 また、学会発表などもオンライン開催されたので、参加できた。 但し、当初予定していた研究対象者となる予定であった同窓会組織等との交渉は、出張等が十分できず実施できなかった。 なお、高齢者に実際のチャットアプリを利用して意欲や孤立状態を評価する実験を計画しており、年度後半から実施準備をはじめた介入研究について、すでに倫理審査も終了しており、十分な体制となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に取得した調査票のデータをさらに解析予定である。研究仮説としては、高齢であっても就労中もしくは何らかの社会活動に参加している人はICTを利活用する傾向があり、経済行動傾向としてより「リスクを選択」し、「現状を変えていこう」との傾向が強いと考えている。また、同時にICTを利用している人の特徴として、過去の就業経験や周囲の人間関係などを明らかにする予定である。なお、行動傾向や人間関係もまた年齢の影響を受けることから、多変量解析などを用いて分析する予定である。 また、調査票では人付き合いの状況について自由記述をとっているため、テキストマイニングの手法で質的分析予定である。 さらに、今年度は高齢者に実際のチャットアプリを利用して意欲や孤立状態を評価する実験を計画している。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナ感染症の予防のための行動規制により、打ち合わせや調査のための出張がほとんどできず、また、学会もオンラインで参加したので、旅費として使用できなかったことにより次年度使用額が生じた。 次年度(2022年度)は規制が緩和されると考えており、研究打合せや学会発表のための旅費支出を計画している。またデータ解析の補助や、実験調査参加者へ謝金等が必要になると思われ、それらの支出に充てる計画である。
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Research Products
(7 results)