2022 Fiscal Year Research-status Report
「ネット依存(ゲーム障害)予防・対策教育」のための系統的なカリキュラムと教材開発
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21K12173
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
豊田 充崇 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60346327)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゲーム障害 / 「ネット依存」 / 「スマホ依存」 / 「ゲーム依存」 / 情報モラル |
Outline of Annual Research Achievements |
スマートフォンの普及によりオンラインゲームやSNS利用の低年齢化に歯止めがかからず、学力低下や生活習慣の崩壊が問題視されている中、教育現場での対策はやはり後手後手にまわってしまっている。依存症児童・生徒の増大は、今後、社会的損失につながり、学力低下は児童・生徒らの将来の選択肢を狭 めることとなる。社会問題として対応すべき事項として、ネット依存(ゲーム障害)予防教育は喫緊の課題である。 本研究は、「ネット依存(ゲーム障害)予防教育」をテーマとして掲げており、まずは小中高校生のスマートフォン利用特にオンラインゲームの利用についての実態調査・分析をおこない、その結果を踏まえての予防教育カリキュラム及び授業用教材開発を実施するものである。また、開発したカリキュラムや教材は、その効果検証を経てから、広く公開し、教育現場で活用できるように提供する。 2年目となる2022年度は、これまでの実態調査によって、ゲーム障害の傾向が、小学校段階から見られることがわかってきたため、アンケート調査の可能な小学校中学年(3・4年生)まで調査の幅を広げて実施した。その結果、依存傾向の低年齢化が顕著にみられ、学力・健康面での弊害もみられた。しかしながら、一方で学校教育での対応策は限定的である。そこで、「予防教育」としては、低学年向け教材開発の開発にも力点を置くことにした。 また、2022年度は、これまで開発した教材の評価を中学生・高校生に実施した。その結果、概ね好感触ではあるが、一部の生徒(特に、依存傾向を持つ生徒ら)を逆撫でしているというような指摘もあり、注意喚起・啓発を趣旨とする教材として更なる配慮が必要と感じている。なお、開発した教材・ワークショップ手法等は、既に研究室の専用サイトで公開されており、医療機関の研修及び学校教育、児童福祉センター等でも活用されており、教材開発・即活用に至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究を経て、教育現場の実態(ゲーム障害への教育現場の対応や児童生徒の実態、求められる教材・指導方法等のニーズ)は把握できてきた。また、開発教材の予定本数はほぼ予定どおりに進んでいる。授業実践での検証結果をまとめてから、下記の教材サイトへの公開を予定している。 ○研究室教材公開サイト:https://web.wakayama-u.ac.jp/~toyoda/iga/ (現在は2021年度実績を公開中)なお、当初は依存傾向の強まる中学生・高校生向けを想定していたが、小学校(特に低学年向けまで)まで拡大する必要が出てきたため、その部分はまだ未着手である。 2022年度末(2023.3)には日本教育メディア学会で、現在までの進捗状況を発表した。諸機関・教育現場で実際の活用実績からの「教育効果」に加えて、教材自体の効果について生徒から得た回答結果を報告した。教師が使いやすい教材だけではなくて、実際の生徒からの評価も概ね良好であった。 以上のような点から、教育現場の調査・分析は予定通りに進めることができたし、教材の開発に関しても予定の本数をクリアできている。また、開発教材の授業等での活用の実際、そして生徒からの評価も得ることができており、この点ではおおむね順調に進展しているといえる。 しかしながら、分析結果のまとめや実態把握からのゲーム障害の傾向分析、次期教材の構想・選出はまだ十分とはいえない。また、教材の公開本数も増えてきたために、リストとしての公開ではなくて、一定の分類や学校種・教科別に分類する必要も生じてきているため、この点にも配慮してきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、すでに公開済みの教材に関して、指導者や生徒らからの評価によって改善点も見出しているために、それらの改良を進めていく予定である。この2年間で開発した各種教材の完成版・最終版の公開に向けて、指導上の留意点や意図等も添え、「授業パッケージ化」を図りたいと考えている。なお、先にも述べたが、低学年向けの教材開発を推進する必要が生じてきたために、再度、対象学年を下げて、新たな教材開発に取り組み、その検証もともに実施していきたい。加えて、開発教材の評価を引き続き実施していく予定である。 なお、教材開発については、多様なアプローチ方法があり、例えば、医療的なアプローチ、消費者教育的なアプローチ、金銭・金融教育的なアプローチ、キャリア教育的なアプローチ、生活習慣上からのアプローチ及びそれらの複合形式もあり得る。ゲーム障害への対応については、それぞれの分野の方々がそれぞれの専門性を持ってアプローチしているが、これらの理論的な整理もおこなっていきたいと考えている。これによって、学校種別にどの段階でどの教科でどういった位置づけで指導するかが明確になるはずである。既存の教科指導の内容に位置付けることによって、ゲーム障害への対応をカリキュラムに位置付けることができると考えられるため、最終的な研究のまとめとして達成したい。 2023年度は当研究の最終年度となるため、これまで提供してきた教材サイトの充実に加えて、当初の予定であった「冊子化」をおこなうこととなっている。現状のサイトでは、各教材に個別にアクセスできるようにはなっているが、まとまった冊子としても提供する。また、 これまでの3年間の調査結果や各種教材の検証については、情報教育やメディア関連学会での発表を年度内に実施し、その成果をもとに論文へまとめる予定である。
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