2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on Mixed Reality That Accelerates Parametrization of the Real World
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21K12198
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
松浦 昭洋 東京電機大学, 理工学部, 教授 (50366407)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 複合現実 / 仮想現実 / MR / VR / 空想的現象 / 形状変化 / 仮想物理 / 磁気粘性流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下の研究を行った。 1. マンガやアニメに現れる、崖等の斜面を滑落する最中に手に持つ道具を利用して停止する、という空想的な行為の一部を体感する枠組みとして、プレイヤーが滑落する代わりに、手に持つナイフ型デバイスの接触する崖面デバイスが上方に運動することで、滑落の感覚を主に前腕部で相対的に体感することが可能な複合現実システムの開発を行った。滑落から停止までをVR映像と共に体験可能な初期システムの実装結果をエンタテインメントコンピューティング2021で発表し、さらに、崖面デバイスにガイドをつけて安全性を向上させ、ナイフ型デバイス内部のバネの座屈を改善したシステムをSIGGRAPH Asia 2021で発表した。 2. 物体の硬度を可変化・パラメータ化する研究に関して、磁気粘性流体(Magneto Rheological Fluid)を封入した面の下部に電磁石を配置し、その磁力の変化により硬度を可変化する平面型触覚デバイスの開発を行った。これまでに、PWM制御により256段階の硬度が実現可能なデバイスを製作し、硬度測定実験に行い、デバイス表面の硬度の変化を定量的に確認した。 3. 物体や身体の形状変化とそれらの体感に関する研究として、まず、如意棒のように伸びる棒を把持する感覚の実現を目的として、HMDで提示する棒が伸縮する映像と同期して、内部の重りが直線移動する棒状デバイスを開発した。また、身体(筋肉)の肥大化というマンガ物理学的現象の体感を目的として、空気を挿入することで膨張するウェアラブルデバイスを胸部と上腕部に装着し、身体(前腕部)に力を入れると、その部位の筋電値に応じてインタラクティブにデバイスを膨張させ、装着部位の圧迫によって身体の肥大化を相対的に体感させるシステムのプロトタイプを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非現実的現象の複合現実的体験として、研究実施計画において、形状変化・仮想物理的現象・より空想的現象の三タイプを挙げたが、本年度はいずれのタイプに関しても、一つ以上の現象を体感可能なシステムを開発でき、一部の成果は、国内外の主要な会議で成果することができた。 具体的に、滑落中の崖面にナイフを刺して停止する空想的体験に関しては、上方に運動する崖面デバイスとナイフ型デバイスにより、滑落する感覚を主に前腕部で体感可能な複合現実システムを開発した。本成果は国際会議(SIGGRAPH ASsia)に採択され、さらにWebメディア(ITmedia NEWS, Seamless等)の取材を受け、動画が38万回以上視聴されるなど注目された。 物体の硬度の可変化に関しては、磁気粘性流体を用いて面の硬度の可変化を実現し、圧力センサ、プロジェクションマッピング等を用いたインタラクティブシステムも開発するなど、研究が大きく進展した。形状変化を伴う現象に関しては、如意棒における棒の伸縮時の把持する手の感覚を体感可能な棒状デバイスを開発し、手にかかる力の物理解析を行った。筋肉の肥大化に関しては、上腕部と胸部に装着するウェアラブルデバイスで、腕に力を入れたときの筋電値に応じて空気により膨張して身体を圧迫することで、筋肉の肥大化を相対的に体感させる複合現実システムのプロトタイプを開発した。 以上のように、各現象の体感のためのシステム開発が進んだことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、特に以下の各課題に力点を置いて研究を進めていく予定である。 1. 崖等の斜面の滑落に関しては、扱う面の幅を50cm程度にするなど拡大化を行い、さらに、ベルトコンベアの表面の隠蔽化、岩など障害物に接触した際の体感を提示するためのナイフ型デバイスを改良、コンテンツの制作等の課題に取り組む。 2. 磁気粘性流体に関しては、これまでに開発しシステムと硬度の測定結果の分析結果をまとめ、VR関連学会で発表するとともに、映像コンテンツの制作、デバイスに加える力のセンシング手法やレスポンスの改善を行う。 3. 形状変化を伴う現象に関しては、如意棒のデバイスに関して、前年度に行った物理解析とシステムの実装結果を論文にまとめて投稿する。筋肉の肥大化に関しては、前年度の空気を膨張させる身体の圧迫方法は局所的な部位の圧迫・解放に難点があるため、各部位の締緩がより容易なバンドを巻く等の代替手法を試み、より適切な体感を可能とするデバイスに改善する。同時に体験コンテンツの制作も行う。 4. 新たに取り組むテーマとして、物体を「潰す、切る」等、形状変化を伴う行為の体感するためのデバイスとコンテンツの開発を行う。また、システム開発と並行して、仮想世界と現実世界が複合した世界の新たな目的・意義・今後の可能性等について考察を深め、仮想と現実の新たな関わり方・用途・実装方法の考案と実践を行う。 以上から得られた成果は、関連する学会(エンタテインメントコンピューティング、VR学会、SIGGRAPH、Augmented Human等)で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 学会旅費として15万円を計上していたが、会議のオンライン化により旅費支出が0となったことが主な理由である。 (使用計画) 次年度は、国内学会で現地開催されたり参加できたりする可能性が高いため、まずその旅費に使用する。さらに、研究の推進方策に記載した崖面・ナイフ型デバイス、磁気粘性流体を用いたデバイス等の改良版の部材費用、装置製作補助の謝金等に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)