2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on Mixed Reality That Accelerates Parametrization of the Real World
Project/Area Number |
21K12198
|
Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
松浦 昭洋 東京電機大学, 理工学部, 教授 (50366407)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | VR / MR / 複合現実 / 空想的現象 / マンガ物理学 / パラメータ化 / 磁気粘性流体 / 圧力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下の研究を行った。 1. 筋肉の肥大化と衣服の破裂というマンガ物理学的現象を対象として、腕部で得られる筋電値を元に上腕部と胸部に巻くバンドをサーボモータを利用して締め付けたり緩めたりして、筋肉の肥大化と衣服の圧力からの解放を相対的に体感させるMRシステムを開発し、WISS 2022で発表した。 2. 物体の硬度を可変化・パラメータ化する研究に関して、磁気粘性流体を封入した面の下部に電磁石、圧力センサ、位置センサを配置して面の硬度を可変化した平面型触覚デバイスとプロジェックションシステム、デモコンテンツを作成し、EC2022で発表した。さらに、デモ装置とコンテンツを改良してVRST 2022で発表した。また、前年度と異なる物理条件下で硬度測定を行い、面の硬度変化を確認した。 3. 設定した硬さの食材を切る感覚を実際には切ることなく提示する包丁デバイスの開発を行った。デバイスの刃部分には型取りゲージのように上下動する刃パーツを設置し、食材に見立てた物体と本デバイスが接触する際の力を元に、サーボモータを利用して設定された硬さを提示する。これまでに、一定の硬さの食材および二種類の硬さが交互に現れる食材を切る感覚の提示を実現し、映像表現・芸術科学フォーラム2023で発表した。 4. 崖面を滑落したキャラクターが把持する道具を用いて停止する、というマンガ物理学的現象を主に腕部で体感するためのMRシステムに関して、前年度開発した平坦な崖面を対象としたシステムから凸凹をもつ崖面を対象としたシステムへ拡張し、ナイフ型デバイスの柄内にソレノイドを設置して、崖の突起部においてナイフの刃をソレノイドで押し出し、面の凸凹の刺激を模擬的に実現した。システムの初期プロトタイプをWISS 2022で発表し、刃をより強く押し出すよう改良したシステムをVR 2023で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非現実的現象の複合現実的体験として、研究実施計画において形状変化による現象、仮想物理的現象、空想的現象の三タイプを挙げたが、いずれのタイプに関しても本年度一つ以上体感可能なシステムを開発して、国内外の主要な会議で発表することができた。 具体的に、形状変化を伴う空想的現象に関しては、筋肉肥大化のためのウェアラブルデバイスを、上腕と胸部に纏うバンドで締め付ける方式を採用して、腕に力を入れるとそれと同期してバンドが身体を締め付け筋肉の肥大化を体感させるシステムとして開発し、WISS 2022で発表して対話発表賞を受賞した。 仮想物理的現象に関しては、磁気粘性流体を用いて磁気により硬度をリアルタイム制御可能な平面型触覚デバイスとその上で動作するコンテンツを開発してEC2022で発表し、グッドプレゼンテーション賞を受賞した。さらに、プロジェクションシステムとコンテンツを改善したシステムをVRST 2022で発表した。食材を切った感覚を体感させる包丁デバイスの研究も行い、型取りゲージのアイデアを利用したデバイスのプロトタイプを作成して映像表現・芸術科学フォーラム2023で発表し、優秀発表賞を受賞した。 滑落中の崖面にナイフを刺して停止する空想的体験に関しては、ナイフ型デバイスにソレノイドを組み込んで刃に直接衝撃を与えることで、凸凹を有する崖面での体感が可能で、かつ崖面デバイスの前面にアクリル板を設置し安全性を高めたシステムとデモコンテンツを開発してWISS 2022で発表し、さらにソレノイドによる触覚刺激を強めたシステムをVR 2023で発表した。 以上の開発状況と評価を踏まえ、おおむね順調に進展している、と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、特に以下の各課題に力点を置き、研究を進めていく予定である。 1. 筋肉の肥大化体験に関しては、前年来の成果を論文にまとめ国際会議・学術誌等へ投稿する。 2. 硬度可変な平面デバイスに関しては、デバイス、プロジェクションシステム、コンテンツ、面の硬度分析等の成果を論文にまとめ、学術誌へ投稿するとともに、これまで開発してきた設置型のデバイス構成を応用し、把持可能なポータブルな硬度可変デバイスの開発を行っていく。 3. 切った感覚を再現する包丁デバイスに関しては、刃パーツを細分化して独立して動作可能とし、多様な形状と硬さの分布をもつ食材に対応可能とする。さらに、食材毎の硬さや押し切り・引き切り等の切り方に関する調査を行い、それらの体感を実現するとともに、人の未知・未体験の硬さや切り方を表すパラメータ領域における切る感覚の提示も実現を目指す。 4. 現実世界の新たなパラメータ化と体感を可能とするため、粘度が可変なデバイス、破砕行為を再現可能なデバイス、顔を打つ触感を体感できるグローブ型デバイスの開発等を行う予定である。さらに、現実世界におけるパラドキシカルな物理現象を取り上げ、センサ・プロジェクション等の技術でその現象の体感を拡張し、仮想現実・複合現実とは異なる方向性の体験が可能なシステムとコンテンツの開発も行う。 得られた成果は、関連する学会(エンタテインメントコンピューティング、インタラクション、WISS、VR、SIGGRAPH等)や学術誌で発表する予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由) 年度末の3月にいくつかの学会に参加する際の旅費の不足を避けたところ、3854円が次年度に繰り越された。 (使用計画) 今後の研究の推進方策に記載したデバイスの消耗品の費用として使用する予定である。
|
Research Products
(9 results)