火熱撹乱による森林土壌細菌生態系の回復メカニズムの解明

2023 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 21K12203
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 笠原 康裕 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (20273849)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 小椋 義俊 久留米大学, 医学部, 教授 (40363585)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: 細菌群集 / 生態系機能 / 攪乱 / 回復 / 山焼き

Outline of Annual Research Achievements

山火事は生態系にとって重大な撹乱であり、土壌微生物にも多大な影響を与える。火災後の土壌生態系の回復に微生物が重要な役割を果たしているが、微生物群集の回復メカニズムは群集の構造・多様性・遷移に関する経時的な解析データの不足により未解明である。さらに生態系機能レベルの群集集合の研究不足も回復メカニズムの理解を阻んでいる。本研究は、火入れ後の回復過程における細菌群集と細菌機能群の構造変化を経時的に解析し、一連の解析結果から、構造と機能の関連性を見いだし、細菌群集の回復の変化とメカニズムを明らかにすることである。
山形大学農学部鶴岡演習林内において、８月に新たな山斜面で、樹木の伐採・撤去、火入れ、山焼きを行った。この実験フィールドで、火入れ前と火入れ１日後から約１年後４３２日後まで７回の土壌採取を行った。これら土壌試料を対象に、16S rDNA遺伝子のアンプリコン解析から細菌群集の構造変化を調べた結果、火入れ１日後に劇的な変化が見られ、10ヵ月程度でほぼ火入れ前の構造に回復した。この結果は、先行研究として行っている、２０１４年２０１５年山焼きフィールドでの変化と比較すると、非常に回復が早く、火入れ後の特徴的な細菌群の組成比も異なっている。
この群集変化の過程における細菌機能群の構造変化を知るために、基質31種類が入った96穴プレートEcoPlateを用いて、土壌の基質分解能の有無を発色から判断し、代謝プロファイル解析を行った。さらに、発色ウェルから、DNAとRNAを同時に抽出して、DNAについて16S rDNA遺伝子のアンプリコン解析の細菌組成解析を行った。抽出RNAについて、分解代謝系を担う細菌群の定性（同定）と定量（発現量）から機能微生物群の推移を知るために、RNA-seq解析を行った。これらDNAとRNAの解析に関しては、現在分析中である。