2021 Fiscal Year Research-status Report
急激な温暖化に曝される北極海流入主要河川網の熱流束分布の動態解明
Project/Area Number |
21K12207
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
堀 雅裕 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (30509831)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 北極河川 / 衛星リモートセンシング / 水温 / 流量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,宇宙航空研究開発機構の気候変動観測衛星GCOM-C搭載SGLIセンサの2018-2019年観測分の校正済み放射輝度データを用いて,北極海流入主要6河川(ロシアのオビ,エニセイ,レナ,コリマ,北米のユーコン,マッケンジー)の主要流路に沿った水域の表面水温,河道幅の抽出を行った.また,各河川の河口付近の地上観測サイトで取得された水温データを用いて,SGLIデータから抽出した表面水温の推定精度の検証を行った.また,地上測定河川流量データとSGLIデータから抽出した河道幅との相関係数を流路沿いに解析を行い,地上測定河川流量と相関の高い河道幅変動を示す地点を特定した. SGLIデータから抽出した河川の表面水温の精度(2乗平均平方根誤差RMSE)は,晴天下のみのデータを使用した場合は1.8K,曇天下の欠損域を時空間内挿したデータを含む場合は2.6Kであり,概ね2-3Kの誤差で春から秋にかけての河川水温のモニタリングができていた.また,SGLIデータから抽出した河道幅は地上測定流量と高い相関(流量のRMSEは観測期間の平均的流量の18%程度)を示し,衛星光学センサによる観測で北極海流入主要河川の流量モニタリングが可能であることが示された. 2018-2019年の6月に観測されたレナ川の表面水温は20世紀後半(1978-1992年)の平均的水温よりも10℃近く昇温しており,近年の温暖化により,河川水温の春の昇温が早期化していることが明らかとなった.なお,本研究成果は,学術誌”Remote Sensing of Environment”に査読付き学術論文(doi: 10.1016/j.rse.2021.112538)として公表済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度にあたる2021年度は,解析用計算機の調達を行い,解析環境の整備を行った.また,SGLIから河川の表面水温および河道幅を抽出するアルゴリズムの開発は順調に進んでおり,地上データを用いた表面水温および河道幅抽出の精度評価結果を見ても,観測結果を解釈するのに十分な品質を有していることが明らかとなっている.また, GCOM-C衛星は2017年12月の打ち上げ後,順調に運用が続けられ,全球の観測データが蓄積されてきており,本研究期間内の運用継続にも期待がもてる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,2020年以降のSGLI観測データを追加解析し,より長期間の河川水温及び流量の変動を衛星観測により明らかにするとともに,他衛星プロダクト(積雪分布,降雨量)や気象データ(気温,雲量,地表面温度等)を用いて,河川流域内の河川物理量と環境要素との依存関係について調査を進める計画である.
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Causes of Carryover |
論文投稿料に予算使用を計画していたが,当初想定していた金額より少ない投稿料しかかからなかったため,本科研費の投稿料への使用を見送り,翌年度に繰り越した上で,再度論文投稿料や学会発表の費用として使用する計画である.
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