2022 Fiscal Year Research-status Report
急激な温暖化に曝される北極海流入主要河川網の熱流束分布の動態解明
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21K12207
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
堀 雅裕 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (30509831)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 北極河川 / 衛星リモートセンシング / 水温 / 流量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,昨年度に引き続き,宇宙航空研究開発機構の気候変動観測衛星GCOM-C搭載SGLIセンサの2020-2022年分の校正済み放射輝度データを用いて,北極海流入主要6河川(ロシアのオビ,エニセイ,レナ,コリマ,北米のユーコン,マッケンジー)の主要流路に沿った水域の表面水温,河道幅の抽出を行い,2018-2019年の解析済データと合わせた5カ年分のデータセットを作成した.この5カ年分のデータより,各河川の水温偏差,河道幅偏差の季節,年変動を評価したところ,6-8℃程度の振幅で季節や年により水温が変動していること,また,河道幅についても5カ年の平均的河道幅から3割程度の拡張あるいは縮小が生じていることを明らかにした.さらに,夏季以降の河川水温と河道幅は逆相関(水温が上がる(下がる)と河道幅が狭く(広く)なる)関係を示す場合がロシアの大河川(オビ,エニセイ,レナ)で多く見られ,夏季降水流入の影響を示すものと考えられた.一方,解析対象河川でもロシア内で最も東端を流れるコリマと北米の2河川(ユーコン,マッケンジー)については,逆の傾向(正相関:水温が上がる(下がる)と河道幅が広く(狭く)なる)が見られており,水温が異なるメカニズムで変動していることが考えられる.このように,SGLIのデータが蓄積してきたことで,北極海流入河川の水温と河道幅(流量)との相関関係が明らかになりつつあり,河川水の温度に影響を及ぼす環境因子やそのメカニズムを明らかにする手がかりが得られるものと期待される.なお,本研究成果は,The 13th Symposium on Polar Science(Online)およびThe Seventh International Symposium on Arctic Research (ISAR-7)(Tachikawa)におけるポスター発表にて報告を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は,2021年度に引き続き,解析用計算機の増強を行い,解析環境の整備を行った.また,2020-2022年分のSGLIデータをJAXAより取得し,北極海流入主要河川の表面水温および河道幅の解析作業を順調に進めている.GCOM-C衛星は2017年12月の打ち上げ後,現在まで順調に運用が続けられ,5年以上の全球の観測データが蓄積されてきており,本研究期間(2021-2023年度)内の運用継続にも期待がもてる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,2018年から2023年までの6カ年分のSGLI観測データを解析し,長期間の河川水温及び流量の変動を衛星観測により明らかにするとともに,他衛星プロダクト(積雪分布,積雪深,降雨量)や気象データ(気温,雲量,地表面温度等)を用いて,河川流域内の河川物理量と環境要素との依存関係について調査を進める計画である.
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Causes of Carryover |
次年度(最終年度)に論文投稿を計画しているため,本年度内の執行を若干抑え,次年度に繰越して投稿料等に使用する計画である.
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Research Products
(3 results)