2021 Fiscal Year Research-status Report
樹木年輪の年層内セルロース酸素同位体比による 高時間分解能 水文プロキシの構築
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21K12208
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 裕美子 京都大学, 理学研究科, 助教 (20509939)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 樹木年輪 / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
≪1≫ 年代モデルの構築: 京都大学芦生研究林で採取されたスギ1個体について、過去100年間にわたり 年輪幅と年輪セルロース酸素同位体比を計測した。年輪セルロース酸素同位体比は25.8~28.8‰の範囲で変動した。伐採年月や中部日本の年輪酸素同位体比マスタークロノロジーと比較することにより生育期間を検討した結果、最外年輪の形成は2017年と決定することができた。 ≪2≫ 針葉樹の指標評価: 上記の芦生産スギ試料について、1918年~2017年の100年分について、年層内を6分割し、セルロース酸素同位体比を分析した。1988~1997年の10年間については6分割の同位体比測定を2回行い、再現性に問題がないことを確認した。年層内の酸素同位体比は24.1 ~32.8‰の範囲で変動し、年々よりも大きな変動幅であった。 年層6分割の隣り合う試料の酸素同位体比は、互いに強い正相関があった。ただし、晩材の最外部に関しては、その前の時期の同位体比と相関が弱く、成長時期が有意には異なっていたと考えられる。 経年と年層内の酸素同位体比変動と気象データの相関解析をした結果、夏季の降水量・相対湿度と負の相関、気温と正の相関を示した。さらに、年層6分割の内側(早材)から外側(晩材)に向かって、降水量と最も強い逆相関を示す時期が春季から夏季の後半へと少しずつ推移していることが確認できた。従って、年層内を細分割することで、より高い時間分解能で古気候復元を行える可能性があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の予定通りに進み、芦生産スギ1個体について年輪幅とセルロース酸素同位体比を計測し、≪1≫年代モデルの構築、≪2≫針葉樹の指標評価を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
芦生産の広葉樹についても年輪幅と同位体比の分析を進める。複数の樹種で年輪データを蓄積し、樹種ごとに異なる生理学的作用があることを考慮して特性把握をし、より精密に降水変動を復元する基盤を確立する。 加えて、初年度に得られたデータを国内学会や国際学会で公表し、年輪気候学的な議論を深める。
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Causes of Carryover |
(理由)実験補助をお願いして謝金を支払う予定でいたが、大学院での研究の一端として研究補助を行ってくれる院生がいたので、次年度の研究費として使用を延期することとした。また、本年度は新型コロナウィルスの感染状況により国際学会へ参加し、研究成果を公表することが難しかったため、次年度の旅費として使用を延期することとした。
(使用計画)樹木年輪試料を分析するために必要な薬品や実験消耗品の購入に使用する。年輪試料の観察など実験に時間を要する作業については実験補助者を依頼し、謝金を支払う。また、研究成果を国際学会および国内学会にて公表し、学術雑誌に投稿するための経費として使用する。
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