2022 Fiscal Year Research-status Report
樹木年輪の年層内セルロース酸素同位体比による 高時間分解能 水文プロキシの構築
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21K12208
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 裕美子 京都大学, 理学研究科, 助教 (20509939)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 樹木年輪 / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
≪1≫ 年代モデルの構築: 京都大学芦生研究林で採取されたサワグルミ1個体について、年輪が明瞭で年輪幅が安定して広い30年間について 年輪セルロース酸素同位体比を計測した。年輪セルロース酸素同位体比は21.2~25.2‰の範囲で変動した。中部日本の年輪酸素同位体比マスタークロノロジーと比較することにより生育期間を検討した結果、測定した区間は1951年から1980年に対応することが明らかになった。
≪3≫ 広葉樹の指標評価: 上記の芦生産サワグルミ試料について、1951年~1980年の30年分について、年層内を6分割し、セルロース酸素同位体比を分析した。年層内の酸素同位体比は20.2~25.9‰の範囲で変動し、年々よりも大きな変動幅であった。 年層6分割の隣り合う試料の酸素同位体比は、互いに強い正相関があった。ただし、晩材の最外部に関しては、その前の時期の同位体比と相関が弱く、成長時期が有意には異なっていたと考えられる。この傾向は芦生産スギと同様である。 サワグルミを水文プロキシとして評価するため、その同位体比と気象データの相関解析をした。結果として、経年および年層内の酸素同位体比は初夏の降水量や相対湿度と負の相関、気温と正の相関を示した。前年度実施したスギにおいて、年層6分割の同位体比と降水量とが最も強く相関する時期が春季から夏季の後半へと少しずつ推移していたのに対して、サワグルミではこの傾向が不明瞭で、気象データとの相関ピークが6月に卓越していた。これは、スギとサワグルミの解析期間の違いによるものであると考えられ、スギ同位体比をサワグルミと同じ期間で相関解析すると、サワグルミと同様の結果が得られた。従って、スギとサワグルミの同位体比からは類似して再現的な水文気候の情報を抽出できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の予定通りに進み、これまでに芦生産スギとサワグルミについて年輪幅とセルロース酸素同位体比を計測し、≪1≫年代モデルの構築、≪2≫針葉樹の指標評価、≪3≫広葉樹の指標評価を行うことができたため。 前年度の研究成果である、≪2≫針葉樹の指標評価について論文としてまとめ、国際学術雑誌に投稿することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
芦生産の樹木年輪について同位体比データの拡充を進める。複数の樹種でデータを蓄積し、樹種ごとに異なる生理学的作用があることを考慮して特性把握をし、より精密に降水変動を復元する基盤を確立する。加えて、これまでに得られたデータを国内学会や国際学会で発表し、年輪気候学的な議論を深める。
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Causes of Carryover |
(理由)実験補助をお願いして謝金を支払う予定でいたが、卒業研究の一端として研究補助を行ってくれる学生がいたので、次年度の研究費として使用を延期することとした。また、本年度は新型コロナウィルスの感染状況により国際学会へ参加し、研究成果を公表することが難しかったため、次年度の旅費として使用を延期することとした。
(使用計画)樹木年輪試料を分析するために必要な薬品や実験消耗品の購入に使用する。年輪試料の観察など実験に時間を要する作業については実験補助者を依頼し、謝金を支払う。また、研究成果を国際学会および国内学会にて公表し、学術雑誌に投稿するための経費として使用する。
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