2021 Fiscal Year Research-status Report
Food resources for the dense-patches of Asian mussel, Arcuatula senhousia, population on a sandy tidal flat
Project/Area Number |
21K12211
|
Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
小森田 智大 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (10554470)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 健司 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 特別研究員 (70739276)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 干潟 / ホトトギスガイ / 底生微細藻類 / 基礎生産 / 二次生産 / アサリ / 有明海 |
Outline of Annual Research Achievements |
有明海では,激減したアサリ資源回復のための覆砂事業で,アサリの競合種(ホトトギスガイ)が大増殖する。ホトトギスガイの餌要求量は,主な餌と考えられてきた基礎生産者ではわずか5%しか満たすことができない。さらに,ホトトギスガイは莫大な有機物を糞として堆積物にため込み,アサリを駆逐する。本研究では,「不足する95%の餌として,糞を分解するバクテリアが重要なのでは?」という問を立てた。この問を解決するため,干潟全域のホトトギスガイの餌要求量と,基礎生産量・バクテリア生産量との物質収支バランスを見積もり,ホトトギスガイへの餌供給過程を明らかにする。 今年度については、緑川河口干潟を対象に、室内培養実験により基礎生産量を測定し、係留系による高頻度観測を組み合わせることで高精度な基礎生産量の定量システムの確立とその観測を実施した。培養実験と係留系調査を行った2地点において、底生微細藻類の光―光合成曲線を構築したところ、地点間に明瞭な差異が検出された。このことは、底生微細藻類群集の組成、堆積物の泥分、光環境などの要因が関連している可能性があることから、干潟全域における基礎生産量を推定するためには関係するパラメーターを特定する必要があることが判明した。干潟の堆積物表層で観測した光量子データを用いて底生微細藻類の基礎生産量を推定したところ、潮汐周期(約2週間)、干潮時の時間(夜間と昼間)および局所的な天候が野外における底生微細藻類の基礎生産量を支配する主要な要因であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の調査では、まず基礎生産量の定量をスムーズに実施するシステムを確立した。そのために係留系による水温、塩分、クロロフィル、濁度、流向・流速、光量子の連続観測システムを2箇所に構築した。合わせて1月に1回の頻度で植物プランクトンと底生微細藻類の光―光合成曲線を構築した。これらの情報を統合して、定点における基礎生産量の高精度に推定した。また、干潟直上水および底泥中のバクテリアの生産量についての培養実験も行っており、今後分析予定である。二次生産量について、アサリが最優占種であることからアサリの二次生産量については測定できる条件が整っているものの、1年目はホトトギスガイの生息数が少ない状況であったため、マット内におけるバクテリア生産量を測定できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、基礎生産量とバクテリア生産量については1年間を通した係留系観測と培養実験を行うことで、年間の代表値を求める。次に流向・流速データとクロロフィル濃度の連続観測より、クロロフィルフラックスを求める。これらの結果を統合して、潜在的な二枚貝類の餌環境を評価する。今年度に、ホトトギスガイが出現しない場合には、既往データを元にホトトギスガイの餌要求量を算出する。さらに現在の優占種であるアサリの二次生産量と堆積物と水中における基礎生産量とバクテリア生産量を対比することで、懸濁物食性二枚貝に対する微生物生産の重要性を評価する予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症のため、つくばから熊本への調査が中止となったことから、当初計画と比べて利用額が減少した。2年目には旅費を用いて現地調査を行う予定である。
|