2022 Fiscal Year Research-status Report
従属栄養的に硝化を行うことは微生物自身にとってどのような意義があるのか?
Project/Area Number |
21K12220
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
藤原 健智 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (80209121)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 従属栄養硝化 / ピルビン酸オキシム酸素添加酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Alcaligenes faecalis由来のピルビン酸オキシム酸素添加酵素(AfPOD)の結晶化と凍結を嫌気チャンバー中で行い、BL-1Aビームライン(KEK-PF)で取得したX線回折データを用いることで、AfPODの二価鉄結合状態の結晶構造を1.7Å分解能で得ることに成功した(PDB ID: 8IL8)。またAfPODの活性に必須であるN末端18アミノ酸残基を欠損した変異酵素(AfPODd18N, PDB ID: 8IQA)、およびBradyrhizobium sp. WSM3983由来のPOD(BWPOD, PDB ID: 8IX6)についてもそれぞれ結晶構造を解析した。現在は、PODの結晶構造、および反応機構に関する学術論文を作成中である。 2.アミノ酸配列に基づく分子系統解析、および機能分析の結果、PODはクラスⅡアルドラーゼ・スーパーファミリーに属する他の酵素タンパク質とは明確に区別される単系統群であることを示した。またPOD遺伝子は、芳香族化合物の代謝や輸送に関与すると考えられる遺伝子と同一の転写単位を構成する。このことからPODは、従属栄養硝化とともに、何らかの代謝経路にも関与する‘ダブルファンクション’酵素である可能性がある。この仮説に関する学術論文を投稿した(査読中)。 3.A. faecalisのPOD遺伝子破壊(dpod)株の作成に成功し、遺伝子破壊によって従属栄養硝化能を失うことを確認した。さらにdpod株と親株を用いてメタボロム解析を行った結果、ポリアミンの一種であるスペルミジンがdpod株では検出されなくなることから、PODが従属栄養硝化だけでなく、ポリアミン代謝にも関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活性型である二価鉄結合状態のAfPODの結晶構造が高分解能で得られ、活性中心の構造を明らかにすることはできたものの、基質(ピルビン酸オキシム)あるいは阻害剤(ピコリン酸)の結合状態の構造がまだ得られていないため、強い根拠に基づいて反応機構を深く議論することは現状では難しい。また、上記実績の2はまだ論文の採択に至っていない。さらに上記実績の3にあるように当初の計画通りメタボロム分析を行い、興味深い結果は得られているものの、分析条件の最適化等を行う必要があるなど、最終年度に向けて解決すべき課題が残っている。以上を総合し、研究開始2年目の進捗状況は「おおむね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の研究計画は以下のとおりである。 1.これまではPOD活性を拮抗的に阻害するピコリン酸(ピリジン-2-カルボン酸)やその誘導体との結合型の結晶化と構造解析を進めて来たが思わしい結果は得られていない。そこで今年度は、AfPODの基質(ピルビン酸オキシム)結合状態の結晶構造の解析を試みる。基質分子が結合した状態の活性中心の構造を明らかにすることによって、POD反応の分子機構の解明のみならず、POD阻害剤、すなわち従属栄養硝化をターゲットとする新規硝化抑制剤の分子設計に向けた重要な情報が得られるものと期待している。 2.実績概要2,3に、PODは従属栄養硝化とともになんらかの代謝経路に関与している可能性があり、その候補の一つとしてポリアミン代謝が考えられることを述べた。また一昨年度の成果として、PODの遺伝子を破壊した放線菌Streptomyces rubrolavendulaeでは気菌糸形成が促進されることを見出している(2021年学会発表)。本研究計画の目的である、PODの‘真’の機能の解明に向け、「ポリアミン代謝」および「放線菌の気菌糸形成」とPODとの関係について分析を進める。前者についてはA.faecalisのdpod株と親株を用いてポリアミンの分析と培養に伴う経時的変化を、また後者については、S. rubrolavendulaeのdpod株と親株を用いてPOD欠損あるいは活性阻害の気菌糸形成への影響を定量的に分析するとともに、この菌種についてもポリアミンの分析を行う。
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Remarks |
研究室HP老朽化のため、リニューアル再開にむけて作業を進めている。
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