2022 Fiscal Year Annual Research Report
高水素濃度下でX線被ばくが及ぼす生物学的影響の検証
Project/Area Number |
21K12233
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊達 広行 北海道大学, 保健科学研究院, 教授
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Project Period (FY) |
2021 – 2022
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Keywords | 放射線 / 水素 / ラジカルスカベンジャー / 抗酸化物質 / スーパーオキシドジスムターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、水素暴露下におけるX線をはじめとする電離放射線の生体組織への影響を、細胞核内DNAや他の細胞内物質へのナノ・マイクロスケールでの物理学的エネルギー付与およびラジカル反応過程から解き明かすことを目的とした。放射線の照射は、活性酸素種(ROS)を生み出す原因の一つであるが、酸化ストレスに対する抗酸化物質としての水素に着目し、水素含有庁純粋水によって酸化効果が弱められるかどうかを検証した。水素水生成器によって精製した水素濃度732ppbを含む超純水のラジカル保護効果を、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性及び安定ラジカル2,2-diphenyl-1-picrylhydrazyl(DPPH)による抗酸化活性評価法を利用して測定した結果、ともにコントロールとの間に有意差はみられず、ラジカルスカベンジャー効果は低いと考えられた。水に放射線が照射されるとH3O+、・OH、H2O、・H、H2O2が発生するが、水素とヒドロキシラジカルの反応は反応断面積が小さく起こりにくいと考えられ、水素による抗酸化効果はラジカル保護に起因とするものではないと考えられた。しかしながら、水素含有リン酸緩衝液で処理をした培養細胞では放射線照射による細胞生存率低下の緩和がみられるとの報告があることから、水素が放射線照射後の細胞内シグナル伝達に直接作用している可能性について今後の検討が必要である。
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