2021 Fiscal Year Research-status Report
放射線誘発甲状腺癌の発症リスクを高める遺伝的素因はあるのか?
Project/Area Number |
21K12240
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
サエンコ ウラジミール 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (30343346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光武 範吏 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50404215)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 甲状腺癌 / 放射線 / 一塩基多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らはこれまで、チェルノブイリ原発事故後の放射線誘発小児甲状腺癌における遺伝子多型をゲノムワイドに解析し、コントロール(被ばくしたが癌を発症していない集団)や散発性成人甲状腺癌のデータと比較検討する研究を行ってきた。その結果、放射線誘発小児癌と散発性成人癌とでは癌発症に関連する多型に違いがあることが明らかになった。しかし、現時点ではこの違いが放射線によるものか年齢によるものかは不明である。そこで本研究では、遺伝的バックグラウンドが同じであるベラルーシ、ウクライナ、ロシア等のチェルノブイリ周辺国において、非被ばく小児甲状腺癌症例を収集し、遺伝子多型解析を行うこととする。 R3年度、世界的な新型コロナウイルス感染拡大は収まらず、本研究の対象となるベラルーシ、ウクライナ、ロシアでもそれは同じであった。また、一部の連携拠点ではテレワーク主体となり、手続きは遅々としてあまり進まなかった。その中で、ベラルーシのミンスクがんセンターより、散発性小児甲状腺癌患者ゲノム24サンプルの提供を受けた。 これまでに収集した症例と合わせ、rs965513 (PTCSC2 or FOXE1)、rs944289 (PTCSC3 or NKX2-1)、rs2439302 (NRG1)、rs1867277 (FOXE1)、rs71369530 (FOXE1)、rs6983267 (POU5F1B)、rs11693806 (DIRC3)等の既知の甲状腺癌発症関連一塩基多形の解析をTaqMan 定量PCRアッセイを用いて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大のため、状態が安定した患者の受診が控えられた。国際的な人の往来が難しく、様々な手続き、サンプルの受け取りが遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大に加え、年度末にロシアによるウクライナ侵攻が開始された。次年度、少なくともウクライナからのサンプル収集は困難であることが予想される。また、ベラルーシ、ロシアとの共同研究についても難しくなる可能性がある。どうしてもサンプル収集が困難な場合、遺伝的バックグラウンドが異なる集団での被ばく歴のない小児甲状腺癌症例の収集を検討する必要があると考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため、出張を行わなかった。また、収集したサンプル数も少なく、試薬等の使用も少なかった。ロシアによるウクライナ侵攻の影響は予想が難しく、使用計画についてもまだ不明であるが、サンプル収集については、対象施設の協力者と連絡を取りつつ、他の集団のサンプルが利用可能となれば、その解析に繰り越し金を用いる予定である。
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