2021 Fiscal Year Research-status Report
超並列計算による高線量率超短時間照射 (FLASH) 効果の数理モデルの構築
Project/Area Number |
21K12246
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
岡田 勝吾 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 助教 (40731732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 祥之 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (00423129)
楠本 多聞 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, 研究員 (90825499)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 放射線シミュレーション / モンテカルロ法 / 超並列計算 / GPGPU / FLASH効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高線量率超短時間照射 (FLASH) における酸素の化学反応過程を定量化する計算モデルを構築することが目的である。本研究の先行研究として、研究代表者はDNAスケールの微小領域において荷電粒子の放射線相互作用をシミュレートし、水の放射線分解で発生した活性種(OHラジカル等)の時間発展をモンテカルロ法で追跡するMPEXS-DNAを開発している。2021年度は、このMPEXS-DNAのフレームワークに入射粒子を所定の線量率でターゲットに対してFLASH照射する機能を実装した。
FLASHに関連するコンピュータ・シミュレーションの結果がいくつか報告されている。その論文に記載の条件とほぼ同一条件でMPEXS-DNAでFLASHのシミュレーションを行い、活性種のG値の時間推移を調べた。短時間に大量の荷電粒子をパルス状でターゲットに照射するとターゲット内は荷電粒子の飛跡が密に存在し、それに沿って活性種等の化学反応が活性化される。そのため、ある一定時間の経過後、DNA損傷の主な要因とされるOHラジカル同士の再結合の頻度が増して、その数(G値)は顕著に減る。そして、その反応の生成物であるH2O2の数が増える。ここで一例として挙げたOHラジカル及びH2O2分子の時間推移の傾向は、参考論文に記載の結果と一致することを確認した。今後は、FLASH照射の実験結果を用いた比較を行い、シミュレーション結果の妥当性を検証していく。
FLASHシミュレーションのベンチマークテストのため専用の計算機を一台購入した。従前よりMPEXS-DNAはGPUによる超並列計算で従来のシミュレータと比較して計算時間の劇的な短縮に成功している。FLASH照射より計算すべき活性種の数が急激に増加しても許容できる時間でシミュレーションが完了することも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では2021年度の後半から、並行してDNAの放射線損傷評価の簡易モデルの検証にも取り掛かる予定であったが、FLASH照射シミュレーションを実行するためのMPEXS-DNAの機能拡張と動作検証に時間を費やした。DNA損傷モデルの検証は、次年度に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは照射粒子を電子と限定して、2021年度に機能拡張を行ったMPEXS-DNAでFLASHのシミュレーションを実行して活性種の時間推移を調べる。そして、電子によるFLASH照射の実験結果(研究分担者からの提供)と比較し、シミュレーション結果の妥当性を検証を行っていく。これと並行して、放射線によるDNA損傷モデルの検証も進めていく。研究成果は学術論文の形でまとめていく。
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Causes of Carryover |
次年度への繰越金が発生した。その理由は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により研究活動が一部制限され、出張が出来なかったためである。この繰越金は、次年度の消耗品に振り替えて研究を遂行していく。
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