2021 Fiscal Year Research-status Report
放射線発がんの“芽”におけるゲノム変異解析~最初のドライバー遺伝子変異を探せ~
Project/Area Number |
21K12250
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
飯塚 大輔 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線影響研究部, 研究統括 (00455388)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳腺幹細胞 / 細胞系譜追跡 / 放射線誘発乳がん / ゲノム異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
原発事故や医療被ばく、職業被ばくでは、低線量放射線による発がんリスク評価が最重要課題である。これまでに放射線が誘発したがんのゲノム変異解析が多数行われているが、放射線による直接のがん化のメカニズムを説明しうる遺伝子変異(ドライバー遺伝子変異)は十分には捉えられていない。幹細胞は発がんの起源細胞とされるため、幹細胞を追跡すれば、がんの最初期を可視化することが可能であると考えられる。 本研究では幹細胞とその子孫細胞を追跡することができる細胞系譜追跡技術を用い、被ばく後の乳腺組織において、がんの最初期の“芽”であるクローン性増殖を捉え、それをゲノム解析することにより、放射線誘発乳がん最初期の遺伝子変異を同定することを目的としている。 本研究では、乳管を形成する2種類の内腔および基底細胞の幹細胞の動態を捉える。ケラチン8(K8)やケラチン14(K14)等の遺伝子プロモーターを用い、この下流に、タモキシフェン依存的に機能するCreERT2リコンビナーゼが組み込まれているマウスを主に用いる。また、CreERT2によるDNA組換えが働くと蛍光タンパク質が発現するマウスを主に用いる。これらのマウスをかけあわせることで上記の乳腺幹細胞の追跡が可能となる。この実験系を用い、低線量から高線量の放射線照射後に経時的に乳腺を採取し、組織透明化処理の後、共焦点顕微鏡等で観察している。前述の実験でとらえた細胞集団の採取について、透明化した乳腺組織からパラフィン切片を作成し、前述の細胞集団を捉えるための蛍光タンパク質の免疫染色を行った。現時点では、通常のパラフィン切片における蛍光タンパク質の免疫染色の条件決定と、透明化組織のパラフィン切片化とHE染色に成功しており、さらにこの切片を用いた蛍光タンパク質の免疫染色の条件検討を継続して行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度行った透明化した組織のパラフィン切片作成とHE染色については順調に実施出来た。蛍光たんぱく質の免疫染色は、条件検討を継続して行っている。また、マウス繁殖や維持は時間的に予測を立てることが難しいが、幸いにもすべて予定の範囲を大きく逸脱することなく実施することができ、被ばくによるクローンの変化について解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
低線量から高線量の放射線照射後に経時的に乳腺を採取し、被ばくによるクローンの変化について解析を行う。この細胞集団(クローン)の採取について、透明化した乳腺組織から凍結もしくはパラフィン連続切片等を作製したのち、マイクロダイセクション法等によって蛍光タンパク質の発現を指標にしてクローン増殖や病変などを採取する。もしくは、少数の細胞だけが標識されるような低用量のタモキシフェン投与を行い、乳腺組織を酵素処理にて分散して、蛍光タンパク質を発現するクローン増殖や病変の細胞集団をセルソーターで分取する。この際、細胞表面抗原(CD24とCD49f等)を指標として、蛍光を発する細胞集団が内腔、基底、間質細胞のどれに該当するのか判定する。いずれの方法でも得られた細胞からDNA等を抽出したのちに、網羅的もしくは既知のがん遺伝子やがん抑制遺伝子の遺伝子変異解析等を行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に本研究で使用するマウスの維持・繁殖に問題が生じた際の経費を見越した費用を計上していたが、幸いにもすべて予定の範囲を大きく逸脱することなく実施することができ、かつ、今年度は研究実施がおおむね順調だったため、消耗品等の購入額を抑制することができ、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は引き続き必要となるマウスの維持・繁殖ならびに今後解析を行う消耗品等として利用する予定である。
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Research Products
(2 results)