2023 Fiscal Year Annual Research Report
放射線発がんの“芽”におけるゲノム変異解析~最初のドライバー遺伝子変異を探せ~
Project/Area Number |
21K12250
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
飯塚 大輔 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線影響研究部, グループリーダー (00455388)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳腺幹細胞 / 細胞系譜追跡 / 放射線誘発乳がん / ゲノム異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線は様々な臓器の発がんリスクを高める。これまでに放射線が誘発したがんのゲノム変異解析が多数行われているが、放射線による直接のがん化のメカニズムを説明しうる遺伝子変異は十分には捉えられていない。組織幹細胞はがんの起源細胞とされるため、本研究ではマウス体内で幹細胞とその子孫細胞を永続的にラベルできる細胞系譜追跡技術を駆使して、被ばく後の乳腺組織において、がんの最初期の“芽”であるクローン性増殖を捉え、それをゲノム解析することにより、放射線誘発乳がん最初期の遺伝子変異を同定することを目的としている。今年度は乳管を形成する2種類の内腔ならびに基底細胞の幹細胞動態を、ケラチン8(K8)とケラチン14(K14)の遺伝子プロモーターを用いた細胞系譜追跡にて解析した。これまでにがん抑制遺伝子Trp53のヘテロ欠損BALB/cマウスでは放射線照射により高頻度に乳がんが生じ、その乳がんではTrp53のヘテロ接合性の消失(LOH)が観察されることが報告されている(Mori et al., Journal of Radiation Research, 2003)。Trp53ヘテロ欠損での被ばく後のK14での細胞系譜追跡を行ったところ、被ばく後12週間で野生型BALB/cマウスでは観察されない大きなクローンが組織透明化処理後の乳腺で観察された。これからホルマリン固定パラフィン包埋切片を作成し、クローンの指標となるtdTomatoタンパク質を抗RFP抗体を用いた免疫染色で捉え、それをレーザーマイクロダイセクション法にて該当の部分を回収した。DNA抽出後、Trp53遺伝子のLOH解析を行ったが、クローンサイズが小さいことに起因したのか、PCRで増幅産物を得ることはできなかった。引き続き、本研究を継続し、Trp53遺伝子のLOHがいつどの時点のクローンから観察されるのか検討する予定である。
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