2022 Fiscal Year Research-status Report
持続的な地中熱利用の長期運用を目指した地下熱・地下水環境影響評価
Project/Area Number |
21K12264
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
斎藤 健志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30735668)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地中熱利用 / 持続可能性 / 地下熱・地下水環境 / 環境影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
新たな冷暖房システムである地中熱ヒートポンプ(GSHP)など、地下の熱利用が世界的に注目されている。地下の熱利用にあたり、その持続的な利用と発展が強く望まれているが、原位置での長期モニタリングに基づく実測データに乏しく、その運用に伴う地下熱・地下水環境への影響は、十分に解明されていない。本研究では、特にGSHPの稼働が地下温度と地下水質に及ぼす影響を定量的に評価すると同時に、温度変化が地下水質変化を引き起こすメカニズムの解明、そして、最小限の環境影響で持続的にシステムを長期運用するための方策を検討する。 本年度は、GSHPの稼働による実測値に基づく短期的な地下環境影響評価を進め、地下温度変化が地下水質変化を引き起こすメカニズムの解明に関連し、重金属類の土壌や堆積物における吸着・脱離・溶出に関わる温度依存性試験に取り組んできた。具体的なGSHPの稼働条件として、昨年度と同様、クールビズ期間(5月~9月)は28℃設定の冷房運転、ウォームビズ期間(11月~3月)は20℃設定の暖房運転を行った。システムの熱源となる地中熱交換器から最も近い、水平距離で1 mの地点で、数カ月間の冷房運転ならびに暖房運転の結果、最大2~3℃程度の温度上昇と温度低下が確認された。この傾向は、ほぼ昨年度の観測結果と同様であり、これら温度変化による地下水質への影響は、特にないと考えられる。 地下温度変化が地下水質変化を引き起こすメカニズムの解明については、複数の土壌や堆積物における重金属類(ホウ素、ヒ素、鉛)の吸着特性に対して、温度依存性評価を進めた。結果の一例として、ヒ素は概して、温度上昇に伴う吸着量の上昇傾向が確認され、相対的に温度依存性が明確であった。また、同様の土壌や堆積物を対象に、重金属類(地下水環境基準に規定されるものが中心)の溶出特性について、その温度依存性評価にも着手し始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本年度、GSHPの稼働による実測値に基づく短期的な地下環境影響評価を進めるとともに、地下温度変化が地下水質変化を引き起こすメカニズム解明に関する室内試験の実施を予定していた。特に、後者に関して、複数の土壌や堆積物における重金属類の吸着特性だけではなく、その溶出特性に対する温度依存性評価も着手できたことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も継続して、GSHPの稼働による実測値に基づく短期的な地下環境影響評価を進めるとともに、地下温度変化が地下水質変化を引き起こすメカニズム解明に関する室内試験(特に、重金属類の溶出特性に対する温度依存性評価)、そして、数値解析に基づく長期的な地下環境影響評価に着手し始める予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度も記載したように、GSHPのシステム周辺に経年劣化が見受けられるようになってきたため、次年度以降、そのメンテナンス費用等が不可欠な状況となる見込みであり、本研究活動に影響のない範囲で支出を抑えてきた。次年度からは、数値解析に基づく長期的な地下環境影響評価に着手し始める予定であり、国内外における感染症対策への緩和傾向も進んできたことから、従来より本研究課題に関連する国際共同研究(特に、数値解析的な側面より)を進めている海外研究機関への出張旅費に加え、国際会議などでの成果発表旅費などに支出する予定である。
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