2023 Fiscal Year Research-status Report
アーカイブとしての堆積物を用いた阪神大震災時のアスベスト放出状況の評価
Project/Area Number |
21K12267
|
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
井上 淳 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (90514456)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥平 敬元 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (20295679)
加 三千宣 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (70448380)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | アスベスト / 球状炭化粒子 / 堆積物 / 震災層準 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度,採取された神戸市東灘区のため池堆積物の2地点の試料のうち,1地点に焦点を当て各種の分析が進められた. Pb-210鉛年代測定,Cs-137の放射性強度などの分析結果からは,堆積物は1950年頃から堆積した物が主体であると推定された.分析から推定された堆積年代に基づくと,採取した池の堆積速度は極めて遅く約70年間で20cm足らずのみ堆積したものと推測された.また,コアスキャナー型蛍光X線分析装置の元素分析の結果,特定層準で重金属の顕著なピークが見られ,この層準において今後さらに詳細なアスベストをはじめとする各種の汚染物質分析を進める予定である.
また,球状炭化粒子分析の結果,球状炭化粒子量は1960年頃までに増加し,その後は増減を繰り返しながらも一定量が維持されていることが確認された.1960年以降の球状炭化粒子は,その化学組成から石炭起源と考えられる粒子が多くを占めた一方で,石油起源の粒子も一定数含まれていた.石炭燃焼粒子の発生源としては,近傍(10km以内)の石炭火力発電所,また石油燃焼粒子の発生源としては近接(2km)した石油火力発電所や約5km離れた石油コンビナート施設などが想定された.このような結果から、調査対象池が流入河川を持たない閉鎖的な水域であるため,得られた汚染物質データは局所的な大気環境や近傍の環境状況を反映している可能性が非常に高いと考えられる.以上の結果は、閉鎖的な水域の持つアーカイブデータが,地域環境の過去から現在にかけての変遷を理解する上で重要な洞察を提供するものであることを示唆する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の種々の理由の遅れにより、当初の予定通りには進んでいない。
|
Strategy for Future Research Activity |
一部の元素の濃集が認められた層準似特に注目して,アスベスト分析を主体とした種々の分析を進める予定である.
|
Causes of Carryover |
研究遂行に想定以上に時間を要し、補助事業期間延長に伴い、次年度使用額が生じた。
|