2021 Fiscal Year Research-status Report
大規模森林火災跡地に生成する多環芳香族炭化水素類の挙動と毒性発現機構の解明
Project/Area Number |
21K12276
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐澤 和人 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (80727016)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 森林火災 / 多環芳香族炭化水素 / 土壌有機物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①森林火災時に土壌有機層内で生成されるPAHsの濃度・組成は表層と下層でどのように異なるのか?②森林火災後の土壌内でPAHsおよびPAHs誘導体はどのように生成・挙動するのか?③PAHs、PAHs誘導体の生体への取り込みと毒性強度は土壌内の共存成分によってどのように変化するのか?という3つの「問い」を設定し、研究を展開する。本年度は火災時に土壌表層、下層で生成するPAHs類の違いを明らかにするため、インドネシアで採取した熱帯泥炭を実験室内で酸化的および嫌気的雰囲気下で加熱し、PAHs類の組成・濃度を比較した。 試料の重量減少は加熱雰囲気によって大きく異なり、窒素雰囲気下で加熱した試料は標準空気下で加熱した試料よりも重量減少率が低かった。特に500℃以上では、標準空気下で加熱した試料のほとんどが焼失していたのに対し、窒素雰囲気下では重量減少率は56%に留まっていた。加熱試料の総PAHs濃度は加熱前の試料に比べ6.3倍以上高い値を示した。窒素雰囲気下で加熱した試料では、本来土壌有機物質が焼失するような500℃以上の高温加熱時でもPAHsが検出された。3-4環のLight PAHs(LPAHs)と5-6環のHeavy PAHs(HPAHs)の濃度比を評価した。加熱雰囲気ごとに比較した結果、300℃では毒性が高いとされるHPAHsの割合が窒素雰囲気下で24倍高いことが示された。本年度行った研究より、泥炭特有の燃焼形態である地中火は毒性の高いPAHsを生成しやすく、その影響を考慮したリスク評価が必要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた酸化的、嫌気的雰囲気下で加熱した土壌のPAHsについてあきらかにすることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
加熱土壌に一定量の水を加え振とう後、得られた水抽出物内に含まれるPAHsを分析することで、それらの溶脱性を明らかにする。加熱実験後の土壌を恒温機内で含水率を一定に保ちながら培養する。酸化的・嫌気性的雰囲気下で恒温培養することで土壌表層、下層内の環境を模した実験を行う。培養中は一定期間ごとに土壌内に含まれるPAHsとPAHs誘導体の濃度・組成変化を明らかにする。培養期間中に得られた結果から、火災跡地表層、下層におけるPAHsの分解、および、PAHs誘導体の生成を明らかにする。 室内実験下において検出されたPAHs、PAHs誘導体の水溶性有機成分共存下における細胞への取り込み機構、および、細胞内における毒性の発現機構を明らかにする。異なる条件で加熱した土壌試料の水溶性有機成分を得る。各PAHs、PAHs誘導体を炭素濃度が一定になるように調製した水溶性有機成分に共存させ、ラット副腎髄質褐色細胞腫(PC-12細胞)、植物プランクトンに対する影響をみる。
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Research Products
(5 results)