2021 Fiscal Year Research-status Report
環境DNAを用いた魚類多種同時遺伝的多型分析法の開発と淡水魚類メタ群集研究の実践
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21K12329
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
小関 右介 大妻女子大学, 家政学部, 准教授 (00513772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武島 弘彦 東海大学, 海洋学部, 特定研究員 (50573086)
山中 裕樹 龍谷大学, 先端理工学部, 准教授 (60455227)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メタ群集 / 遺伝的多型 / 環境DNA / メタバーコーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、魚類における環境DNAメタバーコーディング法として広く用いられているMiFish法を基盤とした魚類遺伝的多様性評価手法を開発することであり、そのために、(1)DNA配列増幅(PCR)条件の最適化および(2)増幅された変異配列のエラーを取り除くデノイジング手法の検討をおこなう。 本年度は、(1)について、現状利用可能なPCR試薬の中からPCRエラーが少なく、かつPCR阻害への耐性が高いものを選定する基礎実験を行い、その選定を終えた。また、この実験においてPCRの温度サイクル数がPCRエラーを含むリードの生成に及ぼす影響を検討し、基盤となるデータを得た。さらに、以前から知られていたMiFishプライマーで増幅されにくい種について、MiFishプライマーの部分改変プライマーを合成して同時に増幅に使用するという検討を行い、大幅な検出感度の向上を確認した。MiFish領域を遺伝的多様性の評価のために利用するには前提として、多くの種がしっかりPCR増幅されることが重要である。当該領域を対象とする場合には、このようなマルチプレックス用プライマーをこまめに設計して利用することで、より包括的な評価が可能になることが示唆された。 (2)に関しては、PCRによるDNA配列の増幅過程を説明する数理モデルを精査し、増幅産物中の真の配列とそれを鋳型として生成されるエラー配列を統計的に判別する手法を開発した。また、開発した手法を統計解析向けプログラミング言語Rにおいて実行するための解析パイプラインを構築し、公共データベースにアーカイブされている複数のメタバーコーディングデータを用いた手法の性能評価および既存手法との比較をおこない、本手法の有効性および既存手法と異なる特性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DNA配列増幅条件の最適化および増幅配列のノイズ除去法の検討については上記のとおり着実に進展した。その一方で、今後、開発した手法のさらなる検討に用いる野外環境DNAデータの収集については、新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急事態宣言の発令・期間延長により、当初計画していた野外調査を全面的に中止せざるをえなくなった。以上のことから、当初計画に対する進捗状況は全体として「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施できなかった野外調査については、当初計画を変更して次年度に実施する予定である。その調査成果次第では、当初次々年度に予定していた2回目の野外調査を取りやめ、データ解析に注力することも視野に入れながら研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
野外調査を含めて複数の研究出張を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急事態宣言の発令・期間延長により実施できなかった一方で、計画を変更して既有サンプルや公共データベースデータを用いた解析をおこなうことにしたため、未使用額が生じた。
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