2021 Fiscal Year Research-status Report
生物保全を目指した御蔵島ミナミハンドウイルカの生態学的研究
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21K12331
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
北 夕紀 東海大学, 生物学部, 准教授 (30710917)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ミナミハンドウイルカ / 摂餌生態 / 繁殖生態 / 保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
伊豆諸島御蔵島に生息するミナミハンドウイルカの繁殖生態ならびに摂餌生態を明らかとするため,2021年度は,2020年度に採取した200個体の糞よりDNA抽出を実施するとともに,糞採取時に撮影された動画より得られた糞由来DNAの個体IDを取得した.得られたゲノムDNAは2017年~2019年までに得られた143個体のゲノムDNAと統合させ,餌生物由来遺伝子(COI領域)におけるPCRおよび次世代シークエンシングによって食性データを得た.また,個体IDが獲得できたゲノムDNAを鋳型としてmtDNAおよび20種類の多型マイクロサテライトにてPCRを実施し,電気泳動によりバンドを確認したものにおいてサンガーシークエンシングによって遺伝子タイピングを実施した.その後,個体の性別,年齢などの生物学的情報を基に,Cervusソフトウェアを用いて親子鑑定を実施し,繁殖生態解明のための家系データを構築した. 食性解析においては,糞採取時の動画解析より個体IDの明確な2015年~2016年の個体ごとの食性データより,個体ごと,年度別,季節別,性別,成長段階別などの複数の項目でクラスター分析による比較を行い,個体ごとの嗜好性の有無や餌生物の幅と構成を考察した.その結果については,現在論文執筆中である. 2021年度には183個体の糞が得られ,研究協力者の基,動画画像データからの個体IDの取得を試みるとともに,糞からのゲノムDNAの抽出を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は2020年および2021年に得られた糞からのDNA抽出,2017年~2020年における糞由来DNAを鋳型とした餌生物由来遺伝子(COI領域)における次世代シークエンシングの実施,個体IDの明確な糞由来DNAを用いたmtDNAおよび20種類の多型マイクロサテライトにおける遺伝子タイピングを当初の研究計画同様に実施できたため. 2017年~2021年に獲得した糞サンプルの個体ID獲得が遅れていることから,成長や年による個体に焦点を当てた食性の変化を検証できていないため、当初の計画以上とは断言できない.
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Strategy for Future Research Activity |
2015年~2016年に入手した食性データを用いた個体差,雌雄差,成熟度別の食性解析結果について,早急に論文としてまとめ,投稿する. 2021年までに得られた糞由来DNAの個体ID取得に努める. 個体IDの明確な個体におけるmtDNAおよび20種類の多型マイクロサテライトにおける遺伝子タイピングを実施し,基礎調査によって得られている個体の性別,年齢などの生物学的情報を基に,親子鑑定並びに血縁解析を実施する.最終年度には,これまで構築した遺伝子情報を基に26年間分のイルカ家系図を作成する.さらに,作成したイルカ家系図を基に繁殖成功した雌雄の繁殖開始年齢,雌雄の繁殖成功率,メスの妊娠間隔を算出し、繁殖成功率の高い雌雄個体の有無や社会的成熟の有無を考察する. 食性解析においては,2021年度に獲得した糞由来DNAを鋳型として,餌生物由来遺伝子(COI領域)における次世代シークエンシングを実施し,食性データの構築を図る.得られた餌生物由来データを年度別,季節別,性別別,成長段階別など複数の項目で比較し,餌生物の幅と構成を明らかにする.最終年度には,12年間分の食性データを基に,成長に伴う食性の変化のみならず,御蔵島海域における環境変化がもたらす食物網構造の変化の有無を考察する.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により購入を希望していた試薬,実験器具(チップ,チューブなどの消耗品)の品薄状態が続き,2021年度内の納品が困難であったことから,2022年度に使用額を移行した.
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