2022 Fiscal Year Research-status Report
流域水循環の変動特性を活用した渇水被害緩和のための持続的水資源管理システムの構築
Project/Area Number |
21K12339
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
V. Narumol 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (30728803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪八重 拓郎 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (00448440)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水循環 / 持続的水資源管理 / 佐賀平野 / 地下水利用特性 / 地下水揚水量 / 土地利用予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告第1部作業部会により気候変動に伴う北半球における積雪面積の減少の可能性及び地域によって降雨量の差の増加が予測されている。近年、日本における渇水の発生頻度が増加傾向にある。令和4年度では、本研究のケーススタディである佐賀平野に流れる嘉瀬川において202日間の取水制限(3月31日~10月18日)が実施され、嘉瀬川ダム供用開始以降最も長い取水制限期間である。本研究の目的は、佐賀平野をケーススタディとし、利用可能な水資源を活用した渇水被害に強い持続的水資源管理システムを提案することを目指す。2022年度に佐賀平野における土地利用変化を予測し、総合水資源管理を視野に入れた地下水管理に関する基礎的知見を得るために水循環及び地下水利用特性等の分析を実施した。 ① 佐賀平野における土地利用変化の予測(担当:研究分担者) 研究対象地域において、2014年と2016年の土地利用変化を基に100mメッシュ単位で2020年から2060年まで10年ごとの土地利用変化の予測を行った。 ② 佐賀平野における水循環及び地下水利用特性等の分析(担当:研究代表者) 佐賀県から佐賀平野の地下水に関する情報(地下水位、地下水揚水量等)及び国土交通省から嘉瀬川からの取水量等を収集し、水収支の観点から水循環の各要素、特に地下水と地表水の利用の長期的な関係を分析した。対象期間は1975年度~2022年度であり、昨年度の分析期間(20年間)より27年間を伸ばした。昨年度に引き続き、地下水の変動特性を解析するための数式モデルについて文献調査・比較を行い、実際に存在している地下水等に関するデータ及び不足しているデータを考慮し研究対象への適用の可能性について再検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
① 佐賀平野における土地利用変化の予測(担当:研究分担者):概ね順調に進展している 土地利用予測が完了したことで、人口予測のデータと併せ将来の水需要予測を行うための準備が整った。 ② 佐賀平野における水循環及び地下水利用特性等の分析(担当:研究代表者):やや遅れている 佐賀平野の水循環に関する情報、特に地下水及び地表水の利用等の情報に関して、地盤沈下防止等対策要綱による地下水揚水の目標量が設定される以前(1975年度)から2022年度までの情報を概ね収集できた。用途別の地下水利用量の変動特性、地下水揚水量と地盤沈下の関係、地下水揚水量と嘉瀬川からの取水量の関係等の長期的な分析を実施した。なお、公開されている地下水揚水量の空間的な分布のデータは1年単位のみとなっていることから適用する解析モデルについて再検討が必要であり、解析モデルを用いて水循環の変動特性の解明は次年度に実施することとなった。その代わり、収集したデータの分析結果を踏まえて地下水の有効活用の可能性を検討し、佐賀平野の地下水利用を管理している佐賀県及び嘉瀬川水系の管理者である国土交通省九州地方整備局武雄河川事務所の関係者に地下水の有効活用について意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
①佐賀平野における水需要の将来予測及び可視化(担当:研究分担者):水需要予測の解析及び水需要予測の結果の可視化を行う。 ②佐賀平野における水循環の変動特性の解明(担当:研究代表者):2021年度~2022年度に得られた情報や研究成果に基づいて研究対象に適用する数式モデルを決定する。数式モデルを用いて佐賀平野の水循環の各要素の変動特性を定量的に解析する。 ③佐賀平野における渇水被害のリスクアセスメント(担当:研究代表者、研究分担者):IPCCの降雨の将来予測結果を考慮し、数式モデルを用いて渇水時の水循環の変動を予測する。また、佐賀平野における渇水被害のリスク評価を行い、渇水リスクマップとして可視化する。 ④渇水被害を対応できる持続的水資源管理システムの構築(担当:研究代表者、研究分担者):渇水時の水循環の変動を基に対応策を提案し、可視化した水循環の情報を活用した持続的水資源管理システムの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
実際に存在している地下水等に関するデータから地下水揚水量の空間的な分布のデータは1年単位のみとなっており、解析モデルの入力データとして情報が不足していることから適用する解析モデルについて再検討が必要であり、解析モデルの構築または購入の実施は2023年度へ変更することとなった。 生じた次年度使用額の使用計画として、解析モデルの構築または購入及び解析に係る人件費・謝金に必要な費用及びを2023年度中に使用する予定である。
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Remarks |
現在、研究成果の整理及び論文投稿の準備を行っている最中である。
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