2021 Fiscal Year Research-status Report
Renewable electricity transmission and supply-demand balance in 2040, considering effects of grid development and electric vehicles
Project/Area Number |
21K12356
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
竹濱 朝美 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60202157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
歌川 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (40356572)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 太陽光発電 / 風力発電 / 広域送電 / 地域間連系線 / デマンドレスポンス / 電力需給 / 石炭発電廃止 / 原子力発電停止 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)2030年までに,石炭発電と原子力発電を廃止し,風力・太陽光発電(PV)を大量導入し,広域送電する場合の西日本の電力需給を解析した。石炭と原子力発電を廃止し,電気自動車,ヒートポンプ(HP)加温,大規模蓄電池を組み合わせ,需要管理(デマンドレスポンス)の必要規模を推定した。在来発電機の起動停止経済運用の簡易モデルを用いて,22種類の在来電源グループの合算設備容量により,1時間単位の燃料費の最適化計算をおこなった。 (2)想定条件: 2030年に,九州地域に,PV18.5GW, 風力18GW,中国地域に,PV11GW, 風力4.7GW,四国地域に,PV5GW, 風力3.3GWを導入する。地域間連系線は,九州-中国向き5.5GW,中国-関西向き5.5GW,四国-関西向き2.8GWに増強する。各電力管区の乗用車台数の20%を電気自動車とし,電気自動車充電とHP加温稼働を活用する。夕刻夜間に,デマンドレスポンスを準備させ,蓄電池を各電力管区200MW×4時間×3日分を準備する。電力需要は,省エネで2020年水準から20%減少する。 (3)九州地域では,1月(冬期重負荷期)には,早朝と夜間の需要ピーク時間帯に,200MWの地域間受電が発生する。200MW規模のデマンドレスポンスを準備することが有効である。8月(夏期重負荷期)には,供給不足は生じない。四国地域では,1月の夜間に,200MWの供給不足と,700MW規模の域外受電が発生しうる。300MW規模のデマンドレスポンスを準備すると,供給不足を効果的に回避できる。再エネ電力比率は,九州で85%(需要比),四国で79%となった。再エネ電力の出力制御率は,九州で6%となった。今回シナリオの風力発電量を実現するには,九州,中国,四国において,2020年時点の風力発電「接続検討申し込み量」を,2030年までに接続する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,コロナウイルス感染拡大防止という観点から,主に,既存の統計分析と電力需給モデルの改良と解析作業を行った。自然変動電源(風力,太陽光発電)による出力は,電力管区の地域偏差と季節偏差が非常に大きい。このため,①供給不足や域外受電が発生しやすい電力管区(地域)と季節/時刻,発生規模と頻度,パターンを分析した。②供給不足の回避,需要ピーク時の域外受電量を抑制するために,電気自動車充電,ヒートポンプ加温,その他のデマンドレスポンス(負荷削減)を投入すべき時期/時刻,準備規模について,適切な組み合わせを考察した。デマンドレスポンスと蓄電池の適切な準備規模を理解することで,供給ひっ迫時の域外受電量を効率的に抑制することを考察した。冬季の早朝,夕方夜間について,デマンドレスポンス(負荷削減)を準備しておくと,供給不足を回避できる頻度が高いこと,蓄電池よりも安価に対応できることが解った。 今年度は,2030年の需給解析を中心に行った。今後は,デマンドレスポンスのポテンシャル容量について,産業部門ごとに,業界団体へのヒアリング調査を行う必要がある。2021年度は,コロナウイルス流行のため,ヒアリング調査ができなかったため,2022年度に調査を行う。学校教育機関への太陽光発電の導入可能量推計について,指定避難所に指定されている学校施設について,地理情報システムGISを活用した分析に着手した。これは,次年度も継続して行う。 エネルギーバランス表の統計データと温室効果ガス排出量のデータをもとに,デマンドレスポンスのポテンシャル量を推定する方法について,今後,統計データの考察を行う必要がある。この点については,着手できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
①ウクライナへのロシア侵攻が発生したため,ロシア産天然ガスと石油の輸入禁止を行った場合の電力需給への影響の推計を行う必要がある。ロシア産天然ガスと石油の輸入量削減による天然ガス発電と石油発電の削減を仮定して,発電量の削減を補うための再生可能エネルギー発電の導入目標量の引き上げについて,データの見直しが必要である。今年度は,この作業を,重点課題の一つとする。各電力会社の有価証券報告書および年次報告書を分析し,ロシア産天然ガスと石油への依存度について,各電力会社の状況を整理する。 ②ビルの空調冷暖房,業務用の冷凍庫/冷蔵庫などの分野について,デマンドレスポンスの導入可能量について,ヒアリングを行う。冬季の早朝,夕方夜間などに,予め契約して,負荷削減の対応がどの程度可能なのか,事業者ヒアリングを試みる。調査の協力を得られる業界/業種が,限定される可能性が高い。調査協力が得られない場合は,既存統計データからの推定作業に切り替える。 ③風力発電の「接続検討申し込み量」「認定容量」について,送電管区ごとの統計データの精査,見直しを行う。「接続検討申し込み量」は変動しうるし,電力管区ごとに状況が異なることから,データの精査が必要になる。欧州では,電気自動車の普及が加速する可能性が高いため,電気自動車の導入量を引き上げて,シナリオの再計算を行う。EU地域における電気自動車導入データを参照する。学校施設への太陽光発電導入可能量について,九州地域の推計作業について,引き続き作業を行う。 ④2030年に,再エネ発電比率60%を達成しうる再エネ発電の導入規模,デマンドレスポンスの準備規模について,再計算を行う。再エネ発電比率60%の達成可能性,燃料費の時間別カーブについて,推計を行う。地域間連系線の拡張規模について,データを更新し,西日本と東日本について,地域送電モデルを改良する。
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Causes of Carryover |
2021年度は,コロナウイルス流行下で,調査のための国外出張および国内出張ができなかった。このため,主に,電力需給のモデル改良作業を中心に行った。モデル改良に必要なソフト(Matlab)は,大学の包括ライセンスがあるため,購入する必要がなく,研究作業自体には,支障はなかった。 再エネ発電に関する事業者への調査は,ZOOM面談によって,ヒアリング調査を行った。このため,調査旅費の執行額が少なかったため,次年度使用額(繰越)が発生した。 2022年度に,再エネ発電事業者,および,デマンドレスポンスに関する事業者ヒアリング調査を行う。このために,旅費,会議費などを,使用する。
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