2023 Fiscal Year Research-status Report
Study on the introduction of payments for environmental services on forests
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21K12359
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
堀 靖人 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究専門員 (80353845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 生美 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究専門員 (00470112)
高橋 卓也 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (20336720)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 森林の持続的利用 / 生態系サービスの価値化 / 自然保護契約プログラム / 損失補償 / アメリカ北西部森林計画(NWFP) |
Outline of Annual Research Achievements |
森林を持続的に利用、維持するために木材生産とそれ以外の生態系サービスの提供が両立できる森林管理が模索されている。その1つが自然に近い林業の実践であり、その促進策としてバイエルン州の自然保護契約プログラムを取り上げた。文献、webサイトおよび政策担当者、森林経営者、研究者へのメール及び対面調査により、次の点が明らかになった。 当プログラムは 2012 年に開始され、その準則(Bayern Stmuv (2021)VNPWaldR 2021)によると助成対象者は私有林所有者であり、助成対象となる措置は、萌芽更新林(中林・低林)の保全と再生、ビーバー生息地の保全、森林利用の中断、高齢林群落の保存、撹乱イベント後の多様な林分構造の保全、ビオトープ木の保全、枯れ木の存置である。定額助成で、枯れ木・ビオトープ木 1 本当たり、萌芽更新林・ビーバー保護林 1ha 当たりいくらという形で明記され、それにもとづいて支払われる。助成実績は年々増加傾向にある。助成の基本的な考え方は、生態系サービスに配慮した措置によって掛かり増しになった費用の補填と失った収入機会の補償である。森林に対する措置の実際の効果を数値化することは困難であり、実務家からのフィードバックや最新の科学的知見をこのプログラムの準則に継続的に反映している。これによって森林への措置に対する支払額と効用とのバランスがとられていると考えられる。 また、アメリカ北西部森林計画(NWFP)の2023年12月の改定案の分析から、保全重視から経済的持続性重視の傾向を読み取ることができた。さらに、森林の環境支払いを含む、生態系サービスの価値化についての森林所有者および基礎自治体を対象としたアンケート調査結果の分析を行い、その結果をドイツで開催された国際学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の影響で延期せざるを得なかった森林に対する自然保護契約プログラムに関するドイツでの実態調査を実施することができた。現地での実態調査では、政策担当者や研究者、森林所有者および管理者に面談してこのプログラムの実際について調査することができた。さらにその成果を林業経済学会で口頭発表した。今後は、論文として投稿する予定である。また研究分担者らもそれぞれの分担課題について研究を進めており、その成果を学会で報告したり、論文化を進めたりしている。 以上から、本課題はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題でもっとも重点をおいていたドイツのバイエルン州で実施されている森林に対する自然保護契約プログラムについて実情をほぼ明らかにすることができた。さらにドイツでは一定規模以上の森林所有者、経営者を対象とした森林生態系サービスの持続的提供に助成する制度が用意されている。今後は、この制度の分析を進める。 日本国内において自然保護契約プログラムのような助成策の導入可能性については初年度に行った地方自治体や林野庁の担当者らへの聞き取り調査から可能性はある一方で現時点では難しい面があることが明らかになった。そのため国内における生態系サービス提供に対する助成の在り方についてさらに研究を進めるとともに次の点についても研究を進める方針である。すなわち、森林クレジット制度を単なる温室効果ガスの削減、吸収のみに限定しないで、生物多様性や生態系サービスの持続的な提供に対してもクレジットを付与する制度の提案である。そのための理論的、実践的な研究を今後進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で当初予定していた海外および国内での実態調査が実施できなかったため、計画通り助成金を使用できなかった。そのため研究期間を1年間延長することを申請し、認められた。 補足のための国内外での実態調査の旅費、学会発表、論文化に必要な経費として助成金を充てる計画である。
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Research Products
(4 results)