2021 Fiscal Year Research-status Report
A Comprehensive study on institutional design for Establishment of New Asbestos Health Damage Relief System
Project/Area Number |
21K12369
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
阪本 将英 専修大学, 商学部, 教授 (10367542)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 石綿健康被害救済制度 / 石綿健康被害救済法 / 石綿 / アスベスト / 持続可能な社会 / 包括的被害者 / 包括的石綿健康被害補償制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、石綿健康被害救済制度の構造的課題を明らかにしつつ、同制度を補償制度並みの給付水準を達成しつつ、包括的被害者(被害者とその家族・遺族)の経済的・身体的精神的負担を軽減するための新たな補償制度について検討することにある。 本研究は,公害研究および環境政策の領域を扱うもので、具体的には公害健康被害者の救済・補償に関する比較制度分析に属するもので、そのなかでも石綿健康被害救済制度に焦点をあてた制度分析となる。具体的には、①石綿健康被害救済制度の構造的問題と制度見直しの根拠を明らかにしたうえで,制度転換に向けた全体像を示すこと,そのうえで,②制度転換における各々の段階で生じる課題と克服すべき点について明らかにすること、これを踏まえ,③アスベスト被害者の立場から,上記①から③の仕組みを包摂した新たな補償制度の意義とその必要性を聞き取り調査から明らかにすることにある。 今年度の研究成果は、その前段階となる「石綿健康被害救済制度の制度転換の到達点を示したうえで、制度転換の到達点に向けた各々の段階で生じる課題とそのための方法論」について予備的な考察を行い、制度転換に向けた全体像を示したことにある。ここでは、第一に、本制度の認定率が低く、巨額の基金が積み上がっているという事実から、本制度の「被害者を隙間なく迅速に救済する」という目的の一部が形骸化してることを述べた。第二に、本制度を救済制度から民事的責任を踏まえた公害健康被害補償制度や労災と同等の補償制度に転換するための論拠について、公健制度と本制度との間の制度分析から示した。第三に、本制度改正の到達点となるもので、上記第二の給付水準を達成しつつ、包括的被害者の身体的精神的負担を軽減するための新たな補償制度について、被害者を取り巻く負の因果プロセスや企業の社会的責任などの視点も踏まえ問題提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の初年度となる令和3年度は、主に、アスベスト関連工場周辺地域を対象に、被害者本人からその家族や遺族へと波及する被害の実態解明に向けたインタビュー調査を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウィルスの蔓延によってインタビュー調査を延期したため、初年度の計画を変更しなければならなかった。 このため、昨年度はインタビュー調査を行わず、本研究の目的となる「石綿健康被害救済制度の制度転換の到達点を示したうえで、制度転換の到達点に向けた各々の段階で生じる課題とそのための方法論」について予備的な考察を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度、新型コロナウィルスの問題によって停滞していた計画を実行するために、アスベスト関連工場周辺地域を対象に、被害者本人からその家族や遺族へと波及する被害の実態解明に向けた実態調査を行う予定である。そのうえで、石綿健康被害救済制度の給付水準が認定患者の生活を保障する水準になっていないという経済的問題に加えて、アスベスト被害による包括的被害者の身体的精神的被害についても調査していく。 それと同時に、本制度を救済制度から,民事的責任を踏まえた公害健康被害補償制度や労災と同等の補償制度に転換するための根拠を提示するための制度研究も行っていく。
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Causes of Carryover |
昨年度は、主に、アスベスト関連工場周辺地域を対象に被害者へのインタビュー調査を行う予定であったが、新型コロナウィルスの問題によってインタビュー調査を延期したため、そのための旅費および人件費をほとんど支出することがなかったためである。 今年度は、新型コロナウィルスの感染状況を注視しながら被害の実態解明に向けた調査を行う予定であることから、昨年度の計画に差異が生じたこれらの費用を支出することになる。
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