2022 Fiscal Year Research-status Report
脱炭素社会に向けた市民の選択変化:地域エネルギー事業体の役割に関する国際比較研究
Project/Area Number |
21K12373
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
的場 信敬 龍谷大学, 政策学部, 教授 (10532616)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 俊一 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (70567990)
木原 浩貴 立命館大学, 法学部, 授業担当講師 (50815355)
石倉 研 龍谷大学, 政策学部, 講師 (90843409)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 地域エネルギー事業体 / 脱炭素社会 / 再生可能エネルギー / 地域エネルギー政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目となる2022年度は、本研究の4つの柱、すなわち、1)国内外の先進地域調査から地域エネルギー事業体(以後、LE事業体)の最新動向をまとめる、2)LE事業体による市民の選択への直接的な影響力を明らかにする、3)LE事業体のエネルギー政策の開発・実践における役割を明らかにする、4)これらの研究成果を実際のLE事業体の経営に随時実装・検証して精緻化を行いつつ、その社会的意義を明らかにする、のうち、初年度にコロナ禍により実施できなかった1)の国外動向の訪問調査により、2)、3)について情報を収集することを主な目標とした。 初年度および2022年度前半のZoomによるオンライン・インタビューにより、ロシアのウクライナ侵攻により激動する地域エネルギー分野について欧州の状況把握を行った際に、地域のエネルギー自立への意識の高まりとそこでのLE事業体の役割の再検討の必要性を認識したが、それらについて現地の関係者と議論し新たな知見を得るためのオーストリア訪問調査を設定した。ただ、当初の予測以上にコロナの影響が続いたため、調査の実施が年度末ギリギリまでずれ込んだのが誤算であった。 今回の訪問調査では、特に人材育成の面でのLE事業体の役割に注目したが、興味深い発見として、地域でエネルギー政策や事業を担う専門家や市民向けの継続教育の提供の役割があった。もともと欧州諸国は日本に比べて労働者の流動性が高く、キャリアアップのためのリカレントやリスキリングといった教育・トレーニングの機会が豊富であるが、エネルギー分野においても、LE事業体を含めさまざまな機関が関連の継続教育プログラムを提供しており、それが地域のエネルギー政策への理解や実践に寄与していることが明らかとなった。 最終年となる2023年度は、この継続教育の制度についての理解を深めつつ、残りの研究課題について国内外の調査から議論を深めていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の通り、当初予定していた国外調査研究の実施が年度末ギリギリまでずれ込んで、十分にその調査結果の検討を行うことが出来なかったため、「やや遅れている」という自己評価としている。 2022年の夏に国内のコロナの状況が一旦落ち着いた際に、長野県上田市を訪問し、現地で持続可能な社会の挑戦の取り組みを進める上田市民エネルギーとそこで活躍する人材のライフストーリーについて、集中的に調査を行った。その後も日本国内では予断を許さない状況であったが、欧州においてはかなり各種の制限が緩和されてきていたため、3月に欧州調査を行うことを設定し、そのための準備の研究会をオンラインで継続的に開催すると共に、訪問先候補となるオーストリアの組織のスタッフへのオンラインインタビューも行った。 3月末のオーストリア調査では、フォアアールベルク州とチロル州において、州政府、地方自治体、エネルギーエージェンシーなどを訪問し、主に3つの視点:エネルギー分野における人材育成の現状と制度、地域創造型教育ガバナンスの先進事例、で調査を行なった。地域エネルギーガバナンスの最新動向、上述した継続教育の重要性のほか、オーストリアでは自治体が初等教育についての比較的強い権限を有していること、地域におけるエネルギーガバナンスを包括的に支える組織としてエネルギーエージェンシーの役割がさらに重要性を増していること、などが明らかとなった。 これらの調査研究成果は、4つの研究の柱のうち、主に1)2)3)に関係するものである。2)LE事業体による市民の選択への直接的な影響力については、市民一般という視点からの調査ができていない為、最終年度においてその研究可否も含めて検討を進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度にようやく国内外の訪問調査を実施することが出来たが、調査先の数も内容の質もまだ不足しているため、2023年度の夏に、更なる欧州調査を予定している。現在、前年度の議論で候補地としてあがった北欧の3国(スウェーデン、フィンランド、デンマーク)について、最適な訪問地を選定すべく事前調査を行なっている段階である。 上述した2)の研究について、この間のエネルギー危機により地域エネルギー事業体の多くが深刻な状況にあったことを鑑み2022年度には実施しなかったアンケート調査を、社会的状況も踏まえながら今年度実施する可能性を探る。 これまでにひきつづき、研究メンバーらが実施している同分野の類似の他研究プロジェクトでの研究成果も上手く活用する、相乗効果を最大限発揮できるような研究体制を構築していく。
|
Causes of Carryover |
当初の支出の予定が、ほぼ国内外の訪問調査時における旅費および通訳などの人件費に充てていたが、これまでコロナの影響により調査が実施できない状況が続いていたため、これまで研究費の多くを繰越してきた。研究メンバーらが実施している他の同分野の類似した研究プロジェクトについても同様の状況であったため、それらとの調整により、本研究プロジェクトの研究費は最終年度の国内外訪問調査のためにまとめて支出することにしたため、2022年度から2023年度についても繰越手続きを行った。
|
Research Products
(7 results)