2021 Fiscal Year Research-status Report
Historical Study on Mapping and Land Policy in Bhutan and its Adjacent States
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21K12382
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
月原 敏博 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 教授 (10254377)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ブータン / 土地制度 / 地籍 / 測量史 / 土地法 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,主な研究対象国であるブータンの,1)土地関係法規(1979年旧土地法,2007年新土地法,及び旧憲法たる1957年基本大法典の翻訳作業,及び,2)収集した地図資料の電子化及び索引図等の作成・整備作業,を行った。 1)は,ブータンとその近隣地域の土地政策史・国土開発史を,地権・地籍制度という法的及び行政的現実(「制度的ランドスケープ」)の側面から可視化するうえで不可欠であり,1957年基本大法典は文語チベット語に近いゾンカ語文のみ,旧及び新土地法はゾンカ語文を正文としつつ英文も併記したもので,これら一連の土地関連法規の正確な翻訳と注釈づくりは研究史的にも先駆的な意義がある。ただし,コロナ禍によりブータンへの渡航は事実上不可能であったため,仮訳と注釈のupdate作業は継続したものの,現地協力者の協力を得て行う土地関連法規3点の翻訳の厳密かつ最終的な翻訳文及び注釈文の作成完了までは至れなかった。ただしこれは,コロナ禍の影響として計画当初から想定した範囲内の進捗状況である。 2)は,2000年代に国際援助(JICA)によりブータン政府測量局が作成した新5万分の1及び2.5万分の1国土基本図の全図幅(130枚余)を600dpiの読み取り精度で電子化し,索引図を作成するとともに,3D座標値をもつ地図として汎用CADソフトのAuto CAD上で3D表示が可能な地図データとして研究室内に整備したものであり,ブータンの土地政策史・国土開発史を,地形図及び地籍図という測量史的事実(「地図的ランドスケープ」)の側面から可視化する(とくに,地図資料をパソコン等で扱える地図・画像データベースシステムに導入する)うえで不可欠であるとともに,地図データの今後の多様な利活用の可能性も拓くものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は,ブータンの土地関係法規の翻訳と注釈づくりについては,コロナ禍によりブータンへの渡航は事実上不可能であったため,仮訳と注釈のupdate作業は継続したものの,現地協力者協力を得て行う土地関連法規3点の翻訳の厳密かつ最終的な翻訳文及び注釈文の作成完了までは至れなかった。ただしこれは,コロナ禍の影響として計画当初から想定した範囲内の進捗状況である。 収集した地図資料の電子化及び索引図等の作成については,2000年代に国際援助(JICA)によりブータン政府測量局が作成した新5万分の1及び2.5万分の1国土基本図の全図幅(130枚余)を600dpiの読み取り精度で電子化し,索引図を作成するとともに,3D座標値をもつ地図として汎用CADソフトのAuto CAD上で3D表示が可能な地図データとして研究室内に整備した。以前に電子化した1960~90年代にインド測量局及びブータン測量局が作成した旧5万分の1国土基本図の電子データ(平成23~25年度科研費,課題番号23652180,による)と併せ,研究室の3D地図画像データベースシステムで,NASA-30m-DEMデータなどと共にブータンの地形図を扱えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は,当初の予定通り,ブータンへの渡航により,1)現地協力者の協力を得て行う土地関連法規3点の翻訳の厳密かつ最終的な翻訳文及び注釈文の作成完了,及び,2)現地調査による,地税局の訪問,及び,土地政策史のなかで重要な施策であるキドゥによった地域開発事例となる農村地域現地での聞き取りと観察の実施を予定する。
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Causes of Carryover |
初年度である令和3年度に地図画像データ処理と出版物の編集のために研究室のパソコンを1台新調する予定であったが,年度初めに本研究計画とは別の教育支援経費が得られたことでそれが新調できたため,本科研費から支出する必要は当分の間はなくなったことによる。 2年度目である令和4年度は,海外渡航による現地調査を予定するが,特に日本円換算では,航空券の値上がりや現地協力者への謝金金額の上昇が見込まれるので,初年度の残額はそれらに当てることになる。
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