2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of Sustainable Cultural Landscape Factors and Creation of Modern Rationality Explored from Historical Changes and Regional Differences in Plant Utilization
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21K12386
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大野 朋子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10420746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田畑 智博 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (40402482)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 方位 / 植物選択 / 祭祀植物 / マリーゴールド / ヒンドゥ教 / ライフスタイル |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はこれまでのバリ島フィールド調査写真から祭祀に関わる植物についてチャナン(宗教的儀式に使用するお供え物)を中心に抽出、整理を行うとともに、バリ島での住民のライフスタイルについて文献調査を開始した。 バリ人にとってバリヒンドゥの世界観を表すチャナンの作成とお供えは日常的に行われており、その材料の消費量は非常に多い。これまで、バリヒンドゥと類似した宗教的基盤を持つネパールヒンドゥの祭祀植物を調査した結果、オレンジ色のマリーゴールドの大量使用と依存を明らかにしてきたが、バリヒンドゥでの植物利用は、ネパールヒンドゥとは異なる点が多い。 バリ島のチャナンには様々な植物、お供えの食べ物が添えられており、2009年、2012年、2020年の現地写真を見るとチャナンの材料とされる花はアジサイ、ホウセンカ、プルメリア、センニチコウ、ハイビスカス、マリーゴールドなど多くの色鮮やかな種が用いられている。この種の選択には宗教上の方位と色の関係があり、対象とする色を有する花であれば使用され、種の限定は見られない。特にマリーゴールドに着目すると、チャナンにおける西は黄色の花が必要とされることからマリーゴールドが使用されることが多いが、2009年ではオレンジ色よりも黄色のマリーゴールドが好まれているように見える。写真画像の枚数に偏りがあるため、この検証は今後必要になる。バリ島では、宗教的な方位と色の関係性により使用される植物が選択されることから、植物種への依存は低く、材料入手の容易さと資源量によって利用される植物は変化すると思われる。 一方、祭祀に用いられる植物は、その国のライフスタイルが大きく関わっている可能性がある。心理学者のアドラーによると、ライフスタイルの構築には文化や子供時代の経験・創造性が関わっているとされことからも2022年度は現地住民への聞き取り調査を重点的行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
地域独自の普遍的な景観要素を抽出するには、対象地域の過去の情報をより収集し、解析を進めなければならないが、新型コロナウイルス感染防止対策による長期の著しい移動の制限から情報収集が行えず、作業、分析が遅れている。また、ライフスタイルの変化については、文献調査だけでは実際の現状が捉えきれない。現地調査が不可欠であるが、これについても厳しい渡航制限のため、実行できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は国内外ともに移動制限の緩和が見られ、文献資料収集および現地調査が可能になると思われる。現状、ネパール、バリ島の渡航は可能であることからネパールではカトマンズ盆地、バリ島ではウブドを中心に現地調査を実行する。調査では祭祀に関わる植物利用の種の選択および住民のライフスタイルの構築が、祭祀に用いられる植物の嗜好にどのような影響を与えているのかについて現地住民から世代別に聞き取りを行いたい。文献調査、資料情報収集は引き続き行う。 社会情勢により再び渡航、移動が不可、制限された場合は、対象地域の変更も検討しながら、これまでの現地データおよび入手可能な情報を用いて整理し、成果を公表する。
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Causes of Carryover |
世界的な問題となっている新型コロナウイルスの感染防止対策により、2021年4月以降も厳しい行動制限が課せられ、国内外ともに調査研究を行うことができなかった。また、情報整理のための協力者も新型コロナウイルスの影響で得られていない。2022年度は現状、渡航、移動制限が緩和され、旅費や所属機関での人件費使用も可能であることから、前年度予算と合わせて使用する予定である。再び移動の制限が生じ、旅費等を使用できない場合は、資料調査およびデータ整理に関わる人件費や成果の公表に関わる英文校閲等に多く予算使用する計画である。
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