2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of Sustainable Cultural Landscape Factors and Creation of Modern Rationality Explored from Historical Changes and Regional Differences in Plant Utilization
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21K12386
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大野 朋子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10420746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田畑 智博 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (40402482)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土地利用 / 祭祀植物 / 色 / 栽培 / 生活様式 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は前年度の文献調査から得た情報が実態と整合しているかについてインドネシアバリ島での現地調査を行った。 バリヒンドゥ教徒が多く住むこの地域では、神々への供物は日常生活の一部となっており、これまでの調査で宗教的儀式のお供え物に使用される植物は、方位と色の関係性を持っていることがわかったが、毎日の供物であり、最も大量に必要となる「チャナン」には方位という意味は現状ないことを現地で確認できた。さらにチャナンを含め、祭祀にかかわる植物がどのように入手、あるいは栽培されているのか主にマリーゴールド、ホウセンカ、アジサイについて調査した。 マリーゴールドはネパールヒンドゥ同様にバリヒンドゥでも利用頻度は高い、しかし、ネパールでは主に花序を用いるが、バリ島では小花が使われるのがほとんどである。チャナンに入っていた黄色の花はほぼマリーゴールドを使うことが分かった。さらに利用頻度の高いホウセンカは、市場では赤、白、ピンク、紫の花が色別に販売されており、価格はマリーゴールドよりも安く売られている。ホウセンカは数年前から稲作農家も田んぼの一部に栽培しており、苗を購入して栽培するマリーゴールドとは違い、種子から始められるため栽培は容易であるという。この実態の詳細については、今後も調査が必要である。また、アジサイは現地聞き取りによると近年導入されたものだという。栽培地はバリ島でも高地に限られ、青色のホンアジサイのみを栽培している。多様な品種が存在するアジサイだが、バリ島では栽培が容易であるという理由でこの1品種のみが栽培されている。市場での販売価格は、上記2種よりも高く、青色の花は他に代用が見られなかった。 以上のような花は、伝統的に使用されていたものとは異なるという住民もいる。人々の生活様式の変化と合わせて、さらに現地調査する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
祭祀植物の利用やその種の選択には地域住民のライフスタイルの実態が強く関わるため、文献調査では得ることのできない情報を現地で収集する必要がある。2022年度後半になり、新型コロナウイルス感染防止対策による海外渡航制限が緩和され、11月に現地調査を実施できた。しかし、文献調査結果と現地調査との整合性や得られた情報の精度向上のためには、1回の現地調査では十分に成果を得ることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、新型コロナウイルス感染防止対策による海外渡航制限の撤廃により計画的な現地調査が可能になる。すでに6月はバリ島への調査が予定されており、昨年度現地で得られたホウセンカやアジアイ等の栽培実態について聞き取り回数を増やし結果の精度向上を行う。加えて住民生活の現状について、複雑な祭祀活動と合わせて聞き取り調査したい。社会情勢により再び渡航、移動が不可、制限された場合は、対象地域の変更も検討しながら、研究調査を継続実行する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染防止対策により、2022年度予定していた2回(雨季と乾季)のバリ島現地調査は11月の1回に留まった。2023年度は渡航制限が解除されており、現地調査は計画的に実施できると思われる。旅費や所属機関での人件費使用も問題ない。6月(乾季)にバリ島現地調査を計画しており、今年度11月以降(雨季)の現地調査を実施することで季節的な違いにも配慮した精度高い情報収集が可能となる。 2023年度は前年度予算と合わせて2回の海外現地調査、成果報告にかかわる予算を使用する。再び移動の制限が生じ、旅費等を使用できない場合は、資料調査およびデータ整理に関わる人件費や成果の公表に関わる英文校閲等に多く予算使用する計画である
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