2021 Fiscal Year Research-status Report
Social History of Chinese County Seat: Rural-urban Relationships and Human Circulation
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21K12401
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田原 史起 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20308563)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 中国 / 県城 / 歴史社会学 / 都市=農村関係 / 人的環流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国社会の理解にとり核心的な意味を持つ都市=農村関係を対象とし、歴史社会学の観点から新しい光を当て、従来の中国認識をいま一歩、深化させることである。そのために、①中国社会の細胞であるともいえる「県域社会」と細胞核に相当する小都市である「県城」にフォーカスし、県城の形成や社会構成をその後背地である農村との関係において歴史的展開から理解する。同時に、②2012年前後より展開している中国政府の「新型都市化政策」の全国的な展開の様相を「県域の都市化」の視点から位置づけ、さらに複数の県の現地調査から把握し、比較分析を展開する。 2021~2022年度の二年間は主として各地の具体的な県城と県域社会に関する各種文献資料の収集、整理、解読などにあてらる予定である。すなわち、資料の得られる県について、①古代における各県城の成立を背景として、②清末、中華民国、③毛沢東時代の県城=農村間の人的環流とそれに伴う人びとの主観的体験と文化心理にフォーカスすることなどを目標としていた。 実際の研究実績としては、③の項目を中心として、毛沢東時代の「都市=農村二元構造」をより深く理解するための試みを行なった。すなわち、都市と農村の間に存在し、両者の間の人的環流を可能にしていた「交叉地帯」についての論考を執筆・公刊である(「都市=農村間の人的環流─集団化時期中国の『交叉地帯』をめぐって」『ODYSSEUS 東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻紀要』26)。一方で、そうした移動の背後にある「主観的体験と文化心理」についての分析については、その前提となる農村小説の解読を現在進めているところであり、2022年度以降の課題として残されている。また、上記①、②についてはほぼ未着手のまま残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査が実施できないことは当初から想定されていた点であり、研究計画には織り込み済みであった。したがって、2021年度において中国の県城と県域社会への理解を深めるための資料収集、分析枠組み構築のための試論の執筆などの基礎作業に着手できたことは、おおむね計画通りの研究の進展であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は引き続き③「交叉地帯」の文化心理の解明のために複数の農村小説の解読・分析を進め、同時に①古代における各県城の成立、および②清末、中華民国における県城の展開についても資料収集と分析を進めていく。 2023~2024年度の二年間は現地調査に軸足を移し、④現時点での「県域の都市化」の進展ぶりを実地に観察し、県内農民が如何にして県城市民と融合しつつあるかについて複数の県について実態を把握する。2020年11月には中国の第七次人口センサスが実施されることになっており、その結果が公開されるであろう2023年度以降は、まずは各県ごとの都市化の進展を統計的に把握する作業も行う。現地調査の候補としては、応募者が先行する科研課題で「村落ガバナンス」の調査を継続してきた山東省蓬莱県(東部)、江西省余干県(中部)、貴州省晴隆県(西部)が挙げられる。同時に中国出身の留学生らを研究協力者とし、彼ら/彼女らの出身地である湖南省衡陽市、雲南省曲靖市、あるいは山西省晋城市などでも調査を展開する。研究成果は、東京大学教養学部地域文化研究学科アジア・日本コースの必修授業「アジア社会文化論」において受講生と共有される。 最終年度の2025年は、日本語の単著として、『「県域」の中国─都市=農村関係と人的環流』(仮題)の執筆を完了し、県城=農村関係の長期的な歩みを踏まえ、新型都市化政策の社会的コンテキストを内在的に浮き彫りにする。
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Research Products
(5 results)