2022 Fiscal Year Research-status Report
戦後台湾における原住民族への身分・権利の付与:可視化データ継承・再活用の研究
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21K12409
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
松岡 格 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (40598413)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 可視化 / 身分登録 / アイデンティフィケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
近代国家による地域社会可視化に関する調査・研究の積み重ねをふまえて、戦後台湾の身分登録制度についての調査・研究をさらに進めることができた。 こうした研究を通じて一つ明らかになったのは、戦後台湾における身分登録制度の機能集中度が高い、ということである。例えば戦後の日本においては、戸籍制度以外に別のシステム、実際の居住地(「現住所」)にしたがって登録を行う住民登録制度が起ち上げられて、これも身分登録制度・公証において重要な役割を担うようになった。これに対して戦後台湾にはそのような制度はなかった。戦後台湾における身分登録の機能は「戸籍」に集中していたのである。「戸籍」は政府の行政サービスの原資料としても極めて重要な役割を担った、と言える。 このことを、戦前から戦後にかけての台湾における可視化データの継承性と合わせて理解することで、台湾の身分登録制度および戦後台湾における可視化をめぐる状況の特徴がさらに明らかになった。 地域社会と国家との間の関係という観点、あるいは国民個人と国家との関係を考えても、「戸籍」は戦後台湾において突出して重要な役割を担ったと言える。国家統治範囲範囲内の住民個人、地域社会との間の資源のやりとりについて考える際に、戸籍情報は重要な役割を果たしている。特に台湾では、一方では「国民」に権利を付与し、一方では徴税や徴兵といった形で「国民」から資源を流用する、というような双方向の流れにおいて戸籍情報はキーとなっている。 オンライン研究会の開催を通じて国際的な学術交流を行い、関連の学術知識を収集することで研究を深めることができた。特に、上記のような、台湾の可視化データの流通に関わる史資料の検証ができたことが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査は依然として困難であったが、それに代えてオンライン・ツールでのデータ収集、現地研究者との知見交換などが予想以上の成果をあげているため、全体でみれば概ね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
調査地の状況からみて現地調査は引き続き難しいと思われるが、引き続きオンライン・ツールなどを用いて調査・研究を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
申請時に予想していなかった、いわゆる「コロナ禍」によって調査・研究の実施方法の変更が余儀なくされたことによるところが大きい。今後の状況を見据えながら調整を行っていきたい。
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