2021 Fiscal Year Research-status Report
White minorities: The construction of whiteness in the multicultural Commonwealth Caribbean
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21K12410
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
伊藤 みちる 大妻女子大学, 国際センター, 准教授 (70768019)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 白人性 / カリブ / トリニダード / バルバドス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の2021年は、当初の研究計画、すなわち旧英領カリブ地域のトリニダードとバルバドスにおける白人性構築に影響を与えている要素を明らかにすること、を中心に研究を進めた。白人性とは時と場所により異なる意味を持つ流動的な概念であり、多くの場合、非白人に対する根拠のない差異と優越性の信仰、社会的・経済的特権を含意する白人の意識を指す。研究初年度に計画していたトリニダードとバルバドスにおけるヨーロッパ系市民を対象とした現地聞き取り調査は新型コロナウィルス感染拡大のため、現地渡航が叶わず、次年度以降に実施延期とした。現地で収集予定であった一次資料を研究協力者に収集依頼し、新たに貴重な資料を入手することができた。その文献調査に基づき、先行研究時に入手した「語り」の再分析を行ったところ、主な研究成果は以下のとおりである。 かつて英国植民地トリニダードにおいてヨーロッパ系白人エリートたちの邸宅であったグレートハウスは、現代21世紀社会においては奴隷制度の副産物とみなされている。なぜならグレートハウスはヨーロッパ系白人エリートがアフリカ人奴隷などの非白人の労働力を搾取し続けたことによって築いた巨富を元手に建設したものと認識されているからである。そのようなグレートハウスの代表格であるマグニフィセント・セブンとカントリー・クラブを事例に挙げ、現代のヨーロッパ系白人トリニダード人にとって、それらのグレートハウスがどのような意味を持つのかを探った。マグニフィセント・セブンは大した意味を持たない一方、カントリー・クラブは白人としての意識の核心としての役割を担っていることが明らかになった。 バルバドスのヨーロッパ系白人に関しても、ヨット・クラブや、あるゴルフコースの会員であることがヨーロッパ系白人社会に属す、また社会階層の上部に属す認識を強めるようである。詳細の分析は次年度以降の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、旧英領カリブ地域のトリニダード、バルバドス、ジャマイカにおけるヨーロッパ系市民の白人性構築過程の分析を行い、3地域の事例を比較するものであるが、(1)文献資料分析と(2)ヨーロッパ系市民個人の語りの分析の2本柱となっている。しかしこの(2)は特に、新型コロナウィルス感染症流行下であるため、現地での聞き取り調査が予定通り遂行できていない。 とはいえ、現地に赴いて収集予定であった資料の一部を、現地の研究協力者に依頼して入手することができたため、(1)を効率的に進めることができた。また(2)の新たなデータが入手できないなりに、先行研究での調査時に入手したデータを駆使し、比較的推進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の要は、本研究テーマである旧英領カリブ地域のヨーロッパ系白人の白人性構築過程についての分析であり、先行研究に引き続き一次資料を収集しながら比較的順調に研究を遂行している。コロナ流行の先行きの不透明さから、今後の研究計画に影響を与えることは必至ではある。しかし多くの制約の中でできることとできないことを見極め、できるだけ計画通りに研究を進め、研究期間終了時には一定のまとめを行うことができるよう、臨機応変に研究を進めることとしたい。
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Causes of Carryover |
2021年度に新型コロナウィルス感染症拡大により実施できなかったフィールド調査を次年度以降に実施する際に助成金を使用する。
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