2022 Fiscal Year Research-status Report
White minorities: The construction of whiteness in the multicultural Commonwealth Caribbean
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21K12410
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
伊藤 みちる 大妻女子大学, 国際センター, 准教授 (70768019)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 白人性 / バルバドス / カリブ / 人種 / ポストコロニアル |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2回(8月・2月)のトリニダード・バルバドス・ジャマイカにおけるインタビューを中心としたフィールドワークと現地での研究発表を行う予定であった。しかし新型コロナウイルス感染症流行のため日本からの渡航が難しく、また現地の感染状況や医療体制についても事実に基づく正確な情報の入手が難しかったことから、渡航を断念したためフィールドワークは実施できなかった。一方ですでに収集していた現地調査データや資料に基づいて、視点を変えた分析を行い、現代バルバドスのヨーロッパ系市民の白人・白人性の構築過程の一端を明らかにすることができた。今年度明らかにした点の概要は以下のとおりである。 (1)バルバドスでは英国植民地下の砂糖プランテーションにおいては労働内容の人種による分業が徹底していなかったため、アフリカ系奴隷とヨーロッパ系労働者の間では人種による分業の概念が育たなかった。同時に、年季奉公や強制労働を行う格安の労働力を提供したヨーロッパ系労働者は、商品として買われたアフリカ奴隷よりも過酷な労働を強いられていた。これらの点から以下の4点を明らかにした。①労働者階級に属すヨーロッパ系市民の存在と白人性、②アフリカ系とヨーロッパ系の混血に対して嫌悪感を示さない労働者階級に属すヨーロッパ系市民の存在の白人性、③アフリカ系市民の労働者階級に属すヨーロッパ系市民に対する嫌悪・侮蔑・差別的言動、④最上層と最下層の両極を占めるヨーロッパ系市民の社会階層と階層間の移動 (2)植民地時代の奴隷所有や労働力搾取などに対する罪の意識の強要が白人認識に与える影響について整理した。 (3)2021年11月に共和制に移行したバルバドスの英国からの人種ナラティブ的・精神的・政治的な完全脱植民地化に向けた世論の変容について考察を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が遅れている大きな要因は新型コロナウイルス感染症である。本研究の中心であるトリニダード・バルバドス・ジャマイカにおけるフィールドワークが2年間もできなかったことが大きい。コロナ感染拡大により日本国外への渡航ができなかった。またトリニダード・バルバドス・ジャマイカの現地感染状況を含めた治安など現地情勢が不明であったため、渡航し調査対象者と対面でインタビューを行うのは憚られた。さらにコロナ感染症が収まりつつある今は、コロナ禍で滞っていた本務校での業務が一気に再開し遅れを取り戻すべくコロナ前の業務量となっているため研究に割ける時間が通常よりさらに限られている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は研究の遅れを取り戻すべく、トリニダード・バルバドス・ジャマイカでのフィールドワークの機会を多く持ちたい。具体的には8月と3月に可能性がありそうである。とはいえ、さまざまな予期せぬ状況に陥ったとしても、現在すでに収集しているデータを新たな視点から分析したりコロナ禍での工夫を通じて獲得したSNS分析などの手段を駆使して研究を進めたい。
研究プロジェクトも後半に入るので、口頭や活字での研究成果発表の機会を持ちたい。今のところ、2023年6月に開催されるInternational Sociological Association World Congress of Sociologyでの口頭発表、11月の質的調査研究会における口頭発表が決定している。そのほか投稿中の査読つき論文が2つある他、複数の論文を執筆中である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は新型コロナウィルス感染症拡大により海外渡航が難しく研究対象地であるトリニダード・バルバドス・ジャマイカでのフィールドワークが計画通りに実施できなかったからである。その他業務と調整を行いながらフィールドワークを実施する予定である。
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