2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of reforestation policy failure in the Philippines: An approach from industrial policy
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21K12419
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
葉山 アツコ 久留米大学, 経済学部, 教授 (30421324)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フィリピン / 植林政策 / 木材産業 / 産業政策 / 人工林 / 育成的林業 / 木材流通 / 採取的林業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フィリピンの植林政策が失敗し続けている根本原因を産業政策から明らかにすることである。すなわち、長年植林政策に取り組みながらその目的が達成できずにいるのは、人工林造成、木材流通、加工に至るサプライチェーンを衰退させた歴代政権の木材産業政策にあるのではないかとの問題意識に基づき、各政権の木材産業政策の内容、決定プロセス、背景にある論理構造を探究することである。 初年度である2021年度は、木材産業政策関係の公文書、木材産業業界誌(1955年創刊、2002年廃刊の'Philippine Lumberman')、木材産業組合会誌(1934年組合発足)などを使用し、天然林における商業伐採が興隆した1950年代以降の歴代政権の木材産業政策内容を整理することを予定していた。木材産業業界誌の各号の収集(デジタル化)は約7割済んでおり、引き続き収集していく。すでに収集した号から木材産業の政策などに関連する記事を抽出し、内容を整理する作業は、予定より大幅に遅れてはいるが、進めている。2021年度はコロナ禍によりフィリピンへの渡航ができなかったため、木材産業業界誌以外の資料の収集はできていない。2022年春以降、フィリピンへの渡航が可能になっているため、現地での資料収集を進め、さらに関係者への聞き取り調査を行う予定である。 フィリピンの木材産業政策を同国における工業化の進展の中に位置づけて理解するために、歴代の工業化政策、同国に特徴的なビジネス・ファミリーと政治との関係、工業化における外資の役割、中小企業の位置づけと実績などに関する既往研究の調査を始めている。今後は、戦後から現在に至るまでのフィリピンの産業別国内純(総)生産や輸出入動向などの主要経済統計の整理を行う必要がある。さらに、木材製造業を理解するために、日本の合板業に関する関する文献調査も始めたばかりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の遅れの主な理由は、コロナ禍のために2021年度の夏季休暇および春季休暇中に予定していたフィリピンでの現地調査ができなかったためとコロナ禍における大学での遠隔授業への対応、学内業務、他の研究などのために本研究に充てる時間が十分確保することができなかったためである。 本研究の2021年度計画は、フィリピンの木材産業政策関係の公文書、木材産業業界誌(1955年創刊、2002年廃刊の'Philippine Lumberman')、木材産業組合会誌(1934年組合発足)などを使用し、天然林における商業伐採が興隆した1950年代以降の歴代政権の木材産業政策内容を整理することであった。これらの資料のうち、入手(全頁のデジタル化作業が終了)しているのは木材産業業界誌全号のうちの約7割(全て2019年までにフィリピン大学林学・天然資源学部図書館および国立林産物研究開発研究所図書館で収集、両図書館は残りの号を所蔵せず)である。未収集号の一部は日本の研究機関にあることを確認しているため、今後は未収集号のデジタル化作業を進めたい。木材産業政策関係の公文書と木材産業組合会誌は、フィリピンにおいて収集する予定の資料である。 デジタル化が済んでいる木材産業業界誌の各号を少しづつ読み進め、内容の整理を初めているが、2021年度は上記のように遠隔授業への対応などへ想定以上に時間を割くことになったため、本研究は計画通りには進んでいない。木材産業業界誌(1955年から1966年までは隔月、67年以降は毎月発行)は、その創刊から廃刊までの期間がフィリピンの木材産業の興隆期から衰退期までの期間と重なるため、本研究に極めて重要な資料である。可能な限り未収集号を探してそれらをデジタル化すること、収集号から必要な記事を抽出し、内容の整理することを早急に進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、コロナ禍のためにフィリピンへの外国人の入国が制限され、入国後も行動が制限されていたが、2022年春以降、入国および行動制限がかなり緩和されている。2022年度の同国での調査は可能であると思われるため、夏季休暇及び春季休暇中に可能な限り長くフィリピンに滞在し、関係諸機関にて資料収集と関係者への聞き取り調査を行う予定である。 木材産業業界誌全号のうちの約7割の号の収集(各号全頁のデジタル化)を終えているが、フィリピン大学林学・天然資源学部図書館および国立林産物研究開発研究所図書館が所蔵していない号のうち、日本の研究機関が所蔵している分については、2022年度中に収集(デジタル化)を終えたい。木材産業政策関係の公文書に関しては、フィリピンにて関係官庁(国家経済開発庁、貿易産業省、環境天然資源省など)で歴代政権の産業振興策に関する聞き取りを行い、関連文書を収集することを考えている。木材産業組合会誌を発行している木材生産者組合の事務局長へは過去数回聞き取りを行っている。フィリピンにて木材産業組合会誌のバックナンバー収集への協力を要請したい。 2022年度は、これらの資料を読み込み、内容を整理すること優先して研究を進めていきたい。また、フィリピンにおける歴代の工業化政策の中に木材産業政策を位置づけるための既往研究のレビュー、および木材製造業を理解するための日本の合板業に関する文献調査を始めたばかりである。継続してこれらの文献、資料を研究していく予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度は、コロナ禍のためにフィリピンへの渡航ができず、そのため旅費、人件費・謝金の支出がなかった。本研究を進めるうえで、2021年度は特に支出を必要とするものはなかった。2022年春よりフィリピンへの渡航、行動制限がかなり緩和されているため、夏季休暇および春季休暇中に同国にて調査を進める予定である。
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Research Products
(1 results)